籠の鳥は、いつ出やる (Page 2)
もっと幼い頃から紘奈を見てきたが故に、彼女の癖も邦彦は色々と知っていた。演技ではなく笑う時には、いつも先程のように紘奈は笑う。
雰囲気が変わったこと胸を撫で下ろし、邦彦は紘奈の肩に手を置いた。
「いつも本当にありがとう。健太も、きっと喜んでる」
「……はい」
はにかむように紘奈は視線を逸らし、赤くなった頬を隠すように少し俯く。だが、立っている邦彦からは髪をかけた耳が赤くなっているのが丸見えだ。
恥ずかしがってすぐに赤面し、顔を隠す。
これも彼女の癖だ。
その癖に、邦彦は数日前の行為を思い出してしまう。
仕事の疲労が澱のように体の奥底にまで沈殿している。それなのに潜んでいた魚のような情動が、身を翻して水底の疲労の泥をかき乱して理性へ波紋を広げた。
広がった波紋は体の中を速やかに奔り、彼の体の一部を隆起させる。
「……あ……」
視線を下げていた紘奈が小さく驚きの声を上げた。ちょうど彼女の視線の先には、押し上げられたズボンがある。そして、ズボンと下着を隔てた先には勃起した性器があるのだ。
息子と同い年の少女に勃起を見せつけている。そんな状況に邦彦は倒錯的な興奮がさらに高まるのを感じた。その興奮は、初めて紘奈を抱いた時にも感じたものと同種である。
「紘奈ちゃん」
名前を呼ぶと、おずおず彼女は顔を上げた。顔が真っ赤になっているが、目を逸らそうとしたり隠そうとしたりとない。二人の視線が行き交う。邦彦は紘奈の濡れた瞳の奥に後悔や嫌悪を探る。しかし、そういったものは見当たらない。
冷静な観察の裏側には、確実に女を抱きたいという彼の獣欲があった。彼は息子の友人である少女に欲情している。
しかし、穏やかな余裕のある大人としての態度は表向き変わらない。
紅く、熱を持った紘奈の耳を指先で弄る。するとくすぐったそうに紘奈が首を竦めた。彼女の表情にはくすぐったさだけでなく、性的な快感も微量ながら含まれている。
すぐにでも突っ込みたい衝動を抑え込み、邦彦は耳から首筋へと指を滑らせ、項の辺りを愛撫した。小鳥の小さく薄い羽根の先で撫でるような微妙な指使いで、産毛の感触や艶やかな肌の滑らかさを楽しむ。
「ふっ……、んぅ」
艶めいた小さな声が桜色の唇から零れ落ちる。
それを追うように邦彦は紘奈の足元へ膝を突いた。許しを請う罪人のように首を垂れるが、実態は少女の制服に包まれた柔らかな腹へと顔を埋めている。頭の奥を痺れさせるような、それこそ比喩ではない色香を嗅ぎ取り、邦彦は恍惚とする。
「……邦彦、さん」
緊張で固くなった声音で、紘奈が自分よりずっと年上の男の名を呼ぶ。そして、慈しむような手つきで彼の頭を抱く。親鳥が雛を抱くようなひたむきな仕草に、邦彦は劣情を抑えきれない。
「紘奈ちゃん、苦しいんだ。楽にしてくれるかい?」
「はい」
ゾクゾクする
エロくて怖くて哀しくて…最高でした。
ま さん 2023年12月24日