籠の鳥は、いつ出やる (Page 7)
淫靡な水音を立て、膣口から愛液が溢れて邦彦の指だけでなく、彼女の下着も濡らしていく。内股を伝って蜜が滴るほど、紘奈は感じていた。
そして、絶頂が近いことを彼女は隠せない。
彼の指を締め付ける膣肉の力が強くなり、息も明らかに荒く速くなっている。
「あ、あ、だめ、だめです、や、めてぇ、先に、イっちゃうからぁ」
邦彦の腕の中で陰核を抓られ、抵抗虚しく紘奈は達した。四肢を突っ張って勢いよく噴出した淫水が床を叩く。
キッチンに満ちていた料理の匂いを圧倒する淫香が少女の体から花開くように立ち上る。
びくびくと何度か絶頂の余韻に痙攣して、紘奈はぐったりして邦彦にもたれかかった。
それを見下ろし、彼は支配者としての感慨を味わうのだった。
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夕餉の匂いが食卓に満ちている。
差し込む明かりは赤々と眩しく、香りが目に見えたのなら食欲と愛欲で斑な影を室内に投げかけていたことだろう。
キッチンに据えられたテーブルには食事が並べられている。それを紘奈の対面に座った邦彦が黙々と平らげていく。美味しいかと彼女は問わない。先程弄ばれた体を密やかに抱き締め、黙して彼の食事が終わるのを待っていた。
食器の触れ合う音だけがキッチンにゆったりと堆積していく。
それを横目に紘奈はキッチンの窓から夕暮れの外を眺める。曇ったガラス窓からは特別なものは見えない。小さく切り取られた夕焼け空と、その下にある黒っぽい木々の一部、それ以外にも近隣の住宅の屋根が覗いている。
邦彦の住いだけでなく、紘奈の家からも見えるような景色だ。
鮮やかな夕焼けを見ると、どうしても紘奈は思い出してしまう光景があるのだ。繰り返し脳裏に現れ、そのくせちっとも色褪せず、記憶の中で鮮烈になっている。
そして、小学校の長々と伸びた廊下の隅で身を縮めて耳をそばだてていた自分を、どういう訳か紘奈は俯瞰した状態で思い出すのだ。
入り込んでくる斜陽は等間隔に黒い線を廊下の床に書いている。その影で区切られた一角に、紘奈を目の敵している女の子グループがたむろしていた。
廊下の曲がり角で見つかってしまわないように、紘奈はしゃがみ込んで息を殺す。
しゃがんだ拍子にランドセルの中で、ノートや教科書が揺れる。それらにはカメ女、ブサイク、デブ、死ねなど稚拙だが、それ故に分かりやすい嘲弄や侮蔑の言葉が並ぶ。
現在とは違い、丸々としていた紘奈は顎の肉を弛ませながら自分の口を両手で塞いだ。
どうやって帰ればいいのだろう。
下駄箱がある昇降口は、あのグループがたむろしている先だ。迂回路はない。
汗を流し、焦って真堪らない思考を空転させていた彼女の視界の先で、健太がいつもと変わらぬ様子で姿を現した。
にこにこと笑いながら、女の子達と話をしている。話しかけられた女の子達は露骨に健太へ媚びた声音ですり寄っていた。
自分と話をしている時とはまるで違う。
女の子達も、健太も。
いつもと変わらないと思っていた光景が、紘奈にはぐるりと回転したように思えた。
ゾクゾクする
エロくて怖くて哀しくて…最高でした。
ま さん 2023年12月24日