鴨の味 (Page 3)
穂波と龍二が初めてセックスしたのは、まだ2人とも学生の頃のことだ。
やはり親族の集まりで顔を合わせ、その時は法事だったか、2人で買い出しに行かされた時に龍二が穂波に言った。
「お前って彼氏とかいんの?」
「え?いや…いないけど」
「じゃぁ処女?」
「は?龍二にいちゃん何言ってんの?」
自分を性的に見ている男の顔を見たのは、穂波は初めてだった。
3つ年上の従兄弟は、若い頃にはずいぶん大きく遠い存在に思えたものだが、そんな龍二が自分を性的に見て欲望していることがはっきりわかると、穂波は興奮した。
そうして一度交わってからは、たがが外れたように2人は互いを貪る関係になっていった。
覚えたての快楽に夢中になり、週末がくる度に穂波は龍二に抱かれた。
穂波の身体は龍二によってどんどん開発されていき、また龍二も若い欲望の全てを穂波にぶつけた。
2人は次第に、互いの身体が癒着していくような感覚を覚えていった。
セックスをすればするほど互いの感覚が共有されるような強烈な快感が得られて、離れ難く結びついていく気がしていたのは、4親等とはいえ血のつながりがあることと無関係ではないように思えたし、その快感のあまりの強烈さから穂波は罪悪感も覚え、できないことではないが龍二と真剣に交際したり結婚という道は考えられなかった。
そして龍二が就職したタイミングで2人は会う機会が減り、穂波が県外に就職したことで完全に関係が途切れた。
穂波は就職先の隣県で結婚し、子どもも持った。
夫は温厚で真面目な男で、龍二とは正反対のタイプだ。
しかし性的な意味でいえば、夫が穂波を満足させてくれることはなかった。
子どもを作るための、淡白で粗雑なセックス、夫が射精するためだけのセックスは穂波にとって苦痛ですらあったが、穂波はどこかで「他人同士なのだから、こんなものだろう」と思って不満を押し殺していた。
食べてはいけない禁断の果実。
至上の旨味と同時に毒も持つ、龍二とのセックスは、穂波にとってそのようなものだったのである。
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