目隠し鬼

・作

戦争が終わり、戦地から復員した清次郎(せいじろう)は、病床の兄・正一郎(しょういちろう)から自らに成り代わって生きてくれと頼まれる。その傲慢さに怒る清次郎は託された兄嫁・八重子(やえこ)を兄の望み通り成り代わって淫らに作り変えてしまうのだった……。

 子供の声が聞こえた気がして、清次郎(せいじろう)は俯いていた顔を上げた。

 彼の視線の先には開け放たれた襖とその奥に広がる畳敷きの部屋が映っている。畳は幾らか擦り切れているが、それでも綺麗に手入れされており、ささくれていない。しかし、そこに落ちる影は見慣れていた頃よりもずっと暗く、深いように清次郎には思えた。

 殆どの家財が失われ、がらんとした部屋の様子に往時の姿はないのだ。

 戦地へと送り込まれ、復員するまでに何度も死を覚悟した。彼がそうしてジャングルの泥の中を這いずり回っている間に故郷は寂れていたのである。

 何を守るために戦地へと送り込まれたのか。

 彼は胸中に一抹の疑問がこびり付いたままでいる。

 目を眇め、清次郎は可能な限りに往時の姿を思い起こす。

 すると幻聴かと思われた子供の声がありありと聞こえる。

 二人の男の子と、一人の女の子が清次郎の前を駆けていく。三人は何事が楽し気に話し、そのうちの一人である男の子が手拭いを目隠しにする。途端に残った男の子と女の子が離れる。

「おぉにさん、こちら、手のなるほうへ」

 女の子が鈴の転がるような声で唄う。

 その声を頼りに目隠しをした男の子がそろそろと歩き出す。すると、今度はその背後でもう一人の男の子が手を鳴らす。

「おにさん、こぉちらっ、手のなるほうへ」

 手拍子と声に翻弄され、目隠しをした男の子があっちこっちへとふらふらと歩く。救いを求めるように手を差し出し、頼りない足取りで二人を追う。

 

「ああ、清次郎さん」

 しわがれた声に呼ばれ、清次郎は我に返った。

 子供達の幻影は消え去り、顔を巡らせると縁側に小柄な老婆が経っている。縁側から差し込む逆光に思わず彼は目を細めた。

 その表情をどう受け取ったのか、老婆は清次郎の前に膝を突き、彼の手を取って涙を流す。

「ほんに、ご苦労さんでした。よくお帰りになって……」

「シズ婆さん」

 やせ細り筋張った背中を撫で、清次郎が名前を呼ぶ。

 かつて自分と、自分の兄の乳母であった老女の背中はいかにも頼りなく、小さい。

 この人は兄と自分を区別はしても差別はしなかった。そのことを思い出し、清次郎は胸の内を決める。

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