メンヘラ彼女と喧嘩の後は
和田智也と福山奈々の2人は、マッチングアプリで出会ったカップルだ。付き合い始めて2年、一緒に暮らし始めて1年になるが、奈々の嫉妬深さと情緒不安定な様子は時間が経つほどに激しくなっていった。しかしそんな奈々の態度を智也も実は気に入っていた。嫉妬で荒れた奈々との、喧嘩の後のセックスの強烈な快感がたまらないからだ。今日も智也は奈々の嫉妬を煽るために飲み会の最中に奈々に連絡せず、わざと遅く帰った。すると奈々は…
「ただいま」
自宅マンションのドアを開けた和田智也は、恋人が中で待っているはずなのに真っ暗な部屋に向かって声をあげた。
そうだろうと思ってはいたが、やはり部屋の明かりをつけずにいる。
智也はこれから始まることを想像して、ぞくっと背中に期待が走った。
「奈々?いないの?」
もう何度も繰り返していることなのに、智也はこうして白々しく暗い部屋を怪しむそぶりを見せる。
そうしてリビングのドアを開けると、そこにはソファーで小さく丸まった福山奈々の姿があった。
「なんだ、いるんじゃん」
部屋の電気を点けて智也が言うと、奈々はうずくまって俯けていた顔を上げてこちらを恨めしそうに見た。
その目は既に泣き腫らしたのか、赤い。
「…なんで連絡返してくれないの」
不貞腐れた声で奈々は言った。
「いや、言ったじゃん、今日は仕事の飲み会だって」
「飲み会だってメールくらい返せるでしょ?」
「そうもいかないよ…上司と一緒だったんだから」
「本当に仕事の飲み会だったの?女と一緒だったんじゃないの?」
奈々の声の湿度が高くなる。
「本当だよ…俺が信じられないの?」
智也はため息混じりの声で答えたが、その心中は期待通りに事が運んでいることに興奮し始めていた。
智也は今日、確かに上司を含む職場の人間との食事会に行った。それは事実だ。
しかし、食事会の間中本当に少しも返信する余裕がなかった訳ではない。
奈々からの連絡に返信しなかったのも、会が終わった後にカフェで時間をつぶして遅く帰ったのも、わざとなのだ。
「だっていつもそうじゃん、いつも仕事の飲み会とか言って全然連絡返さないし、こんな遅くまで帰ってこないのおかしいじゃん、女としか考えられないっ」
奈々の詰問がヒステリックになってくる。
「いい加減にしてくれよ…」
智也は吐き捨てるように言うと、リビングを出て浴室に向かった。
腹の中では、今夜もまた激しくなるぞと思う。そうして期待で下半身に血が集まるのを感じながら、シャワーを浴びるのだった。
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