胸の花が綻ぶと (Page 8)
「大丈夫? しんどいなら、このへんにしとく?」
「してほしいの。最後まで」
「いいの?」
「でも、初めてだからあまり激しくされるのは、怖い」
初めて。
そう言われて藤馬は頭がくらくらするほどの征服感に襲われる。しかし、汐里に嫌われることは嫌だし、なによりも行為に拒否感を持たれたくない。
藤馬は理性を総動員して、屹立した男根を慎重に彼女の中へと侵入させた。
「うぅ、はぁっ」
亀頭が埋没した辺りで彼女は大きく息を吐いた。そこで少し停止し、藤馬は汐里が落ち着くのを待つ。そして、ゆっくりと男根を前後に動かす。じわじわとぬめりが増し、膣が解れてきたのが分かった。
「もう少し奥まで入れるよ」
汐里がう頷いたのを見て、藤馬はじわじわと彼女の最奥を目指した。そして、こつんと子宮の入り口に彼の先端がぶつかった。
「ひぃんっ」
びくびくと体を震わせ、汐里が声を上げる。
「ごめん。痛かった?」
「ちが、ちがうの、体がびりってぇ」
「気持ちよかったんだよ。大丈夫」
手を繋ぎ、藤馬はゆっくりゆっくり汐里の性感を探っていく。慎重に動くうち、藤馬は彼女の性感帯を次第に把握していった。いくつかあるそれらを順番に刺激し、快楽を受け入れられるようにする。
「あ、すごいよぉ」
次第に汐里の声が熱を帯びていった。
快楽に理性が押し流され、性という人間に刻まれた本能が上位になる。彼女はひくひくと腰を蠢かし、藤馬を受け入れるているようだった。
藤馬は我慢していた射精の誘惑が腰から背中へと這い上っていくのを感じる。頭まで達したら、きっと理性は弾けてしまう。
「汐里さん、おれそろそろ」
「いいよ。中に」
ぎゅっと繋いだ手に力が入り、汐里の背が弓なりになる。
「……! んんぅっ」
ぐっと奥まで挿入し、男根を子宮の入り口に密着させて、藤馬は射精した。今までの射精など比べ物にならない快感が脳内を駆け巡る。
「藤馬くん」
「……汐里さん」
止まらない射精の快感に半ば意識を呑まれながら藤馬は、汐里のことを抱き締める。汗ばんだ彼女の体は陶磁器のように滑らかで、壊さないように触れたかったけれど、藤馬はどうしても強く抱かずにいられなかった。
そのまま射精後の疲労に身を任せていると、不意に髪を撫でられる。
汐里が悪戯っぽく笑い、彼を見つめていた。
二人は繋がったままでうとうとと微睡む。
そんな満ち足りた時間を引き裂くように、電子音が鳴り響く。二人は慌てて離れ、電子音の出所を見つけた。藤馬の鞄である。そこに入っていたスマホが鳴っていたのだ。
「どうしたの?」
「合コンこないかって、誘われた」
「行くの?」
「なんで? オレの彼女はこんなにかわいいのに? 行く必要ないじゃん」
行かない、と短く返信し、藤馬はスマホを放り投げた。
だが、すぐに拾い上げ、真剣な顔で汐里に向き直る。
「汐里さん、連絡先教えて。オレ知らないんだけど」
ぽかんとしていたが、すぐに汐里は肩を震わせて笑う。
「なに、それ? ナンパみたい」
「いいじゃん、教えてよ」
悪ノリし、藤馬もそれっぽく言う。
ひとしきり笑って、藤馬と汐里は寝転んだ。
二人は同じベッドで朝まで眠るだろう。
それぞれの胸元で綻ぶ金属の花が、朝日を受けるまで鈍く光るまで。
(了)
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