馴染みのからだ (Page 2)
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2人が交際していたのは21の春から3年間だ。
若さゆえかどちらも恋愛に前のめりで、また性欲も旺盛だった。
交際中はセックスの頻度が高く、交わるたびに燃え上がるような熱を感じていた。
しかし一方で喧嘩の頻度も高かった2人の別れは結局、将吾の浮気を疑った杏奈が言い争いの最中に泣きながら「もう別れる」と言ったことがきっかけだった。
3年付き合った男と喧嘩別れしたことを杏奈は2ヶ月引きずった。
そして自分の有り余る性欲と向き合わざるを得なくなったとき、杏奈は男と真剣交際することを止めた。
杏奈にとって将吾は初めての男だったので、将吾とのセックスが自分にとっていかに「よい」ものであったかを杏奈が思い知ったのは、遊びで数人の男と寝てからのことだった。
セックスの相性さえ悪い男とまともに付き合う気には当然ならず、杏奈はその後もワンナイトを繰り返し、その中から悪くなかった男をセフレにすることを繰り返した。
いま杏奈が定期で会っているセフレは1人で、年上のハンサムな遊び慣れた男だ。
プレイ内容の満足度は決して低くないし、だからこそセフレでいるのだが、杏奈にしてみると全体的に優しすぎるきらいがあり、回数がこなせないのが不満ポイントだ。
しかしワンナイトで男を漁るとハズレを引く確率も高いので、コスパとリスクを考えると固定のセフレとの関係が気安く楽しめるので多少不満があっても手放せない。
別れてから1年が経った頃から、将吾からちょこちょこ連絡が入るようになった。
「久しぶり、会えない?」というだけの言葉で、セックスが目的なのは明白だった。
何人と寝ても結局将吾とのセックスほど気持ちよくなることができなかった杏奈はその誘いに惹かれるところもあったが、一度付き合って別れた男とセックスするのは惨めな気がして無視し続けた。
抱かれれば結局将吾とのセックスに溺れる自分がわかっていた。
将吾から気まぐれに入る連絡を無視し続けたのにSNSをブロックしなかったのは、いつかこんな風に彼を求める日が来ると思っていたからかもしれない。
今夜杏奈が自分から将吾に連絡したのはセフレと会う予定がドタキャンされたからだが、「今夜会えない?」と一言だけのメッセージにすぐに既読がついて「どこで?」と返信が来た時、彼女は込み上げる期待で溢れるものを止められなかった。
恋愛感情的な意味では杏奈の方に未練はない。
これは強がりではなくて本心からないのだが、将吾とのセックスの記憶が強烈に残っており、あの快感に対する渇望は正直なところ今もある。
今夜抱かれたらわかるだろう。
この渇望が幻想だったのか、それともやはり将吾のセックスがダントツで良いものなのかどうか。
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