青い薔薇の観察者は幼い蕾を育てる (Page 2)
「寝ちゃうんじゃない?」
「そうかもな。まあ、一応だ」
「寝てる相手を見ててもいいことなんかないよ。帰ろうよ、先生」
「ちったあ、黙ってろ。俺らの仕事は待つことだって最初に教えただろうが」
「不毛過ぎるよ。寒いし、私もベッドで寝たい」
「もう少し我慢しろ。奴さん、まだスマホを弄ってるだろうが」
「寝る前にちょっと触ってるだけじゃん」
「そんなに寝たきゃ、そこで寝てろ」
「やだよぉ」
鈴鹿の泣き言をいよいよ澤木が無視していると、望遠鏡の向こうで微かに動きがあった。ベッドの中にいる女が寝返りを打ち、澤木達に顔を向けたのだ。我慢強く、じっと澤木は女の表情を観察する。
女はじっとスマホを見つめていた。もぞりと身体が動く。シーツの下で女の手が動いてるのが微かな陰影が波打つことで分かる。
「始まったか」
「なにが?」
スマホのディスプレイの光で、女の顔だけが暗い寝室の中でライトアップされている。暗視状態の望遠鏡からは、それこそ真昼のような明るさで女の表情が見て取れた。
口を半開きにし、時折舌で唇を舐める。女の表情は次第に淫靡さを増し、シーツの下の動きも大胆になっていた。
「ねえ、あれって……」
「奴さん、自分を慰めてる。オカズまでは分からないがな」
「いやいや。これって覗きじゃん。最悪」
「しょうがねぇだろ。俺だって、好きで覗いてるんじゃねぇんだ」
「なにそれ」
「さっき言ったろ? 『ブルー・ローズ』の裏オプションだよ」
女は眉根を寄せ、ついにシーツを体の上から払う。そして、寝間着の下に再びを手を差し込むと自らの乳房を揉みしだく。
「裏オプションってなんなの?」
「要は女を気持ちよくするサービスだ。女の望みを叶えるような、そんなセックスを提供するんだとよ」
「それで、覗きをしなくちゃなんないの?」
「完璧なサービスってのは、どんなもんだと思う?」
「……すごいやつ?」
「お前、頭をもっと鍛えないとダメだな。……完璧なサービスってのはな。こっちが言わなくも全部察してやってくれることだ」
「そんなの無理じゃん」
「だから、下調べをしてるんだよ」
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