令和テレクラ・ブルース「呼び出し音は肉欲のプレリュード」 (Page 2)

西暦2020年のテレクラとコロナ

ここで今更ながら説明しておくとテレクラとは、個室に入り、出会いを求める女性からのコールを待つ場所の事である。お店側としては、場所は提供するものの“セックスする打ち合せをする機会”を与えるのではなく、あくまで“スペースを貸す”というスタンスを取っている。あくまでも、店内の個室を使うと言うのがミソだ。

よく「在宅テレクラ」などと銘打っているカードもあるが、あれはモノホンではなく「ツーショットダイヤル」の事を指している。
サービスの内容には問題はないので、わざわざ「テレクラ」というワードを使う意味が分からないというのが、事情通の意見である。

で、本当のテレクラはといえば、合コンやパーティの誘いや、一緒に映画を観に行く相手なりを探すスペース・機会を持ってもらおうというのが建前だ。
そのなかの選択肢としてのセックスだったり愛人、パパ募集だったりしているのである。「大人の自己責任で」というわけだ

富永もそうしたお店側のスタンスには最初から賛成だった。理由は、このように混沌としていた方が面白味があるからだった。現に、2019年には「まだまだ遊べる現代の“テレクラ事情”」(確かこんなタイトルだったと記憶している:本人談)を上辞したくらいだ。

ただ、時代は流れて移ろいやすい。首都圏に4軒の営業を確認していた(2019年末時点)テレクラ店も、このコロナ禍で2店へ。
考えてみると、個室は換気が悪く、なおかつ女性とアポを取っても「密」では…。こうなっては、コールしてくる女性客にも怖さがつきまとうのは目に見えているから消滅も自然なのかも知れなかった。こうした「流行の流れ」→「コロナ禍の恐怖」から店数は減り、テレクラは絶滅種へ一直線というわけである。

「“タダマンは遠くになりにけり”ってか!」

美奈代との一線を終えてから富永は、そんな事ばかりを考えていたのだった。

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