令和テレクラ・ブルース「呼び出し音は肉欲のプレリュード」 (Page 4)

「もしもし、おいくつの方ですか?」

「年は40代前半、北千住にいるんだけど出て来れる?来れなかったら他の人に変わって」

普段の富永ならば、こんな横柄な口のきき方をするオンナはことらから願いさげにするところ。だが、妙に引っかかる点があったので、もう少し会話を続ける事にしてみた。

「いつも千住から? オレも以前は、北千住のテレクラにもよく行っていましたよ」

「あっそう。私も何度かかけたけど、あそこは会話だけだったな。仕事と子育てが一番忙しい時期だったから」

「そうなんだ。偶然だね。せっかくだから、会わないですか?」

「う~ん、どうしようかな…。ケータイ番号を教えてくれて、確実に来てくれるるならいいわよ。エッチは会ってから決めるとして」

富永は、この会話の中の「ケータイ番号を教えてくれるなら~云々」に、記憶が蘇ったのだった。確か、10年くらい前に竹ノ塚のテレクラにいた時に、同じく「北千住から~」のオンナとアポした記憶があったのである。
当時、スマホが普及していなかったために「ケータイ番号を」というのは不自然ではないが、スマホと呼ばないところが気になった。そのワードを言う時の“声の感じ”で、富永にはピンと「来たぁ~」だったのである。
それと職業が「スポーツクラブのインストラクター」という点も珍しいので富永は確信したのである。
つまり、このサオリなるオンナは10年前に1度、会ってお相手したオンナだったのだ。

それにしても、「“声”や“口調”は変わっていないなぁ」と、富永はつくづく思い、しばし感慨に耽っていた。男も女も長くヤっていると、こんな事もあるんだな、と。

いくら想定内の出来事だとしても、富永は驚きと焦りを隠せなかった。自分が話しの中心にいるとはいえ、自分が記事で提唱していた理論がこんなに見事にハマるとは。
当然ながら10年前と同じく「ケータイ番号」を教えた富永は、これまた10年前と同じ北千住駅東口のトンネル前でアポを取りつけたのである。

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