終電のカップル (Page 4)
駅から陽平の家まで、2人は無言で歩いた。
途中でコンビニに寄って、飲み物を買った後は、どちらからともなく手をつないでいた。
陽平の部屋は男の一人暮らしらしい雑然とした感じがあった。
莉子も同期の仲間と何度か来たことがある。
言ってしまえば慣れた部屋だが、2人の間に流れる空気は全く慣れないものだった。
手をつないで歩いている間、莉子は陽平の手の甲を指ですりすりと撫でた。
それに応じるように陽平の指も動き、互いの手を愛撫しながら2人はその性的興奮を高めていった。
強い恋愛感情によってというよりはむしろ、性的欲望の高まりによって2人は一線を越えようとしているのか、あまり判然としなかった。
部屋に入るなり、陽平は莉子の腰に腕を伸ばした。
そしてそのままベッドの方に歩きながら、もう片方の手でネクタイを緩めた。
「…いいの?」
ベッドの横まで来て、陽平は莉子を正面から見て聞いた。
無言でここまで来たし、互いの欲求が手に取るようにわかるのに、それでも言葉で最後に確認する必要があると陽平は思った。
「いいの?って、聞きたいのは私だよ…あんた彼女いるじゃん」
莉子は上目遣いに陽平を見ていた視線を少し下におろして言った。
友達になってから、互いに恋人がいる時期も何度もあった。
そして今、莉子はフリーだが陽平には彼女がいる。と、莉子は思っていたが
「あー、別れた」
「え、聞いてない」
「1週間前のことだから、今日会ったらお前にも言うつもりだったんだよ」
「そう…」
恋人がいると思っていながらそういうつもりでここまで来ておいて、ぎりぎりで確認するなんてずるいなと莉子は自分で思ったが、心の引っ掛かりが取れたのは事実だ。
「で…莉子は、いいの?」
「…」
莉子が無言で頷くと、堪えきれないという勢いで陽平は莉子に口付けた。
啄むようにちゅっちゅっと数回唇を合わせて、その後陽平は莉子の唇を割って自分の舌を口内に侵入させた。
「っん…ふ、」
さっきの電車内の女性と同じような、甘い吐息が莉子の口から漏れた。
莉子は陽平の舌に応じるように自分の舌を絡ませ、互いに貪りながらキスを深めた。
くちゅ、くちゅと水音が静かな室内に響く。
こうなることにずっと怯えていたのも、それでもこうなることをずっと望んでいたのもどちらも本当だ。
唇を離して見つめ合うと、莉子の瞳は既に情欲に潤んでいた。
「ごめん…あんま優しくできないかも」
陽平は気まずげにそう言って、莉子の華奢な身体をきつく抱きしめた。
「…いいよ」
莉子がぼそっと言うのを聞いて、いよいよ抑えられなくなった陽平は莉子をベッドに押し倒した。
そしてキスを繰り返しながら莉子のシャツのボタンに手をかける。
莉子も下から陽平のシャツに手を伸ばし、外れかけたネクタイを取るとボタンを外し始めた。
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