勇者は異世界で凌辱される (Page 4)
「失礼します」
人型の魔物が入ってきて報告した。
「ヴィグルー様、勇者たちが攻めてきました」
その言葉に、利奈の瞳が輝きを取り戻した。
「……ほら見なさい、あんたが何しようと仲間は助けに来てくれる。何度だって立ち上がるわ、私達は負けない!」
「ククク、そうか」
ヴィグルーが魔物に命じた。
「状況を見せろ」
部屋に大きな姿見が持ち込まれた。魔物が呪文を唱えて杖を振ると、鏡の表面に城の内部が映った。龍平と千里が魔物たちと戦っていた。千里が攻撃を受けてよろめく。龍平が千里を抱き寄せ、魔物を倒した。
鏡越しでも仲間として以上の感情があると伝わってくる。
「おやおや、仲のいいことだ」
利奈がうつむく。その様子をじっと見つめてから、ヴィグルーはマントを外した。
手枷を外し、マントを利奈の肩にかける。
「え……?」
「何をされたかは隠せずとも、見られたくはあるまい」
利奈はマントの前を合わせて体を隠した。
ヴィグルーは利奈のあごを掴み、口づけした。
「んう……っ」
ねっとりと舌を絡め、唾液を流し込んでいく。
「やっ……ファースト……なの……にっ……」
抗議をより深く重ねることで封じ、口づけを堪能する。
「んふう……ん……」
顔を離し、ヴィグルーは濃い藍色の錠剤を取り出して利奈に見せた。
「これは男を不能にする薬……生涯勃起できなくなる。この薬を龍平に飲ませろ」
「何を……」
「そうすれば、もう龍平は千里を抱けない。そのうちに、目の前で抱き合うことも減っていくだろう」
利奈は錠剤を凝視した。
「お前が龍平を手に入れられるかもしれないということだ、利奈」
ヴィグルーは利奈の口の中に指を入れた。錠剤を歯の裏に貼り付ける。
「これはこの状態では溶けない。砕いて飲み物などに混ぜろ、いいな」
利奈が口を閉じた。歯の裏にある異物はその存在を主張している。
「手に入れられなくても心配することはない。やりおおせれば、お前を俺の妃に迎えよう。たっぷり……」
軽くキスし、ささやく。
「愛してやるぞ」
*****
「ヴィグルー様、本気ですか」
別の城へ向かう道中、魔物が尋ねた。
「何がだ?」
「愛しているという」
「ククク、どうかな」
本意を掴みかねて、魔物が首を傾げる。
今頃、利奈は仲間に助け出されているだろう。傷を負っている勇者たちを、みすみす見逃したことになる。
「勝てる戦いもせずに城を捨てたのはなぜですか」
「すぐ倒すのもつまらん。育つのを待ってやろうじゃないか。あの若く、青い果実のような体も成熟した頃に再び摘み取るのもいいかもしれん」
「そうですか。どうぞヴィグルー様のお好きに」
「ああ、好きにするとしよう。どちらにせよ、俺すら倒せないようでは魔王は倒せん。利奈がどう動くか、楽しみじゃないか。征服などつまらんと思っていたが、どうしてなかなか楽しめそうだ」
異世界の空に、ヴィグルーの笑い声はいつまでも響いていた。
(了)
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