束の間の恋の為に
容姿に難のある娘に、素敵な彼氏ができたと喜んでいた母・美波。だがそれは単なる罰ゲームの一環だった…。娘に真実を知らせたくない美波は、付き合いを続けてもらうため、娘の彼氏の性奴隷へと転落していく。自分一人真実を隠していれば、周りの皆はずっと幸せ…
年頃になる一人娘の智奈美は、優しすぎるというくらい良い子で、目に入れても痛くない、世界一大事な子供です。
けれども夫そっくりのぽっちゃり体形と素朴な顔立ちは、異性から魅力的に見えるとは言い難く、これから恋愛で苦労するのではないかと、私は内心やきもきしていました。
そんな智奈美が、ある日ひょっこり家に連れてきて、恥ずかしそうに紹介してくれた同級生の彼氏。
相原悠斗と申します、と礼儀正しく自己紹介をしてくれた彼は、絵に描いたような爽やかなイケメンでした。
いくらでも相手を選べそうな彼がと、正直言って驚きましたが、宿題をしながら初々しく笑い合う二人はとても幸せそうな様子。
初めての彼氏がよほど嬉しかったのでしょう、普段は物静かな娘も、学校から帰るなり今日はあれをしたこれをしたと、可愛らしいデートの様子を報告してくれるようになりました。
そのうちお小遣いで洒落た下着をこっそり買いはじめ、週末には慣れない化粧をしていそいそ出掛けるように。
…やっぱりもう、そういう事もしてるのかしら。
急な変化を少し早いんじゃないかと心配すると同時に、自分の学生時代の淡いドキドキを思い出して、微笑ましいような、応援したいような気分になります。
…あの悠斗くんならきっと大丈夫よね。ちゃんと智奈美のことを大事にしてくれて…
*****
「そういえば、まだあれと付き合ってんの?」
買い物帰りにふらりと入った喫茶店で、近くの席にいた女の子がどこか馬鹿にしたように言いました。
「あぁ、智奈美?3ヶ月の罰ゲームだから、あと2ヶ月。エンドレスで連絡してくるし、ほんと勘弁してほしいわ」
娘と同じ名前に、えっと思ってよく見ると、話している相手は紛れもなく悠斗君です。
「ウケる。普通告白されても冗談だって気付くよね。もう親にも会わされたんだって?」
「そうそう。あっ、それがあいつのかーちゃん全然似てなくて、マジで美人なんだよ。俺あっちなら余裕で抱けるわー」
…そんな…嘘…
娘が騙され、陰で貶されていたこと。娘の彼氏にそんな目で見られていたこと。好青年だと思っていた悠斗君の豹変ぶり…
色々な感情で心臓はバクバク、コーヒーカップに添えた手は小刻みに震えます。
バイトの時間だと女の子は先に帰り、暫くして食事を終えた悠斗君が立ち上がった時、運悪く目が合ってしまいました。
悠斗君は一瞬気まずそうな顔をしましたが、すぐに不敵な笑みを浮かべて私の向かいに座りました。
「…聞いてた?」
「…あ…あの、えっと………さっきの話…冗談…よね…?」
ふん、と悠斗君は鼻を鳴らし、テーブルの下で私の股の間に足を入れてきました。
「!?」
「いい加減、あんなブスの相手はうんざりなんだよ」
「…っ…そんな…」
「でも———」
「ぁっ!?」
ぐりっ、と革靴の爪先があそこに食い込みます。
「…おばさん次第では、もうちょっと夢見させてやってもいいけど?」
「…や…、ちょっ…え…?」
すぐ側には他のお客さんもいるというのに、何てことをするのでしょうか。
「あんまビクビクしてると変に思われるんじゃない?」
「…ん…っ…や、やめて、悠斗君…ぁ…」
「で、どうすんの?おばさん。俺は別に、智奈美なんかどうでもいいし」
「…」
『今度の土曜、水族館に行くんだけど…どっちが可愛いかな?』
鏡の前で服をとっかえひっかえ、嬉しそうに悩んでいた娘の姿が浮かびます。
本当のことは知らせたくない。
自分が少し我慢して、娘の幸せが続くんだったら…
「…な…何をすれば良いの…?」
*****
良いですね
初めまして。私・都内某進学校で数学を担当して居ります。毎日・忙しいのですが癒やされて居ます。高揚して居ります。嬉しいです。
国立 さん 2021年9月28日