人妻玩具
自らが経営する店の金を持ち逃げされてしまった加々野(かがの)。激高した加々野は金を持ち逃げした従業員の妻・陽奈子(ひなこ)を凌辱した。さらに凌辱したその写真をネタに、陽奈子を拘束して卑猥な調教を施すことにするのだった……。
沢山並んだ郵便受けを見ると、加々野(かがの)は鳥の巣箱を思い出す。
四角くて、丸い出入り口が付いた、木製のあの巣箱だ。
子供の頃に住んでいた団地。その団地の近くには商店街があり、その端っこに沢山の鳥を売っている店があったのだ。その店の壁一面にずらりと並んだ小さな巣箱。
あの光景がいつも脳裏に浮かぶ。
加々野は巣箱の幻影を横目に、郵便受けの前を通り抜けてマンションのエントランスへと足を向けた。
エントランスの入り口には暗証番号を打ち込むコンソールがあり、そこへ今朝知ったばかりの番号を打ち込む。さらにコンソールの下にある鍵穴に鍵を挿入すると、エントランスのガラス張りのドアが左右に開いた。
鍵を引き抜き、憮然とした顔のまま加々野はエレベーターに乗り込んだ。
目的の階のボタンを押し、デジタルの階数表示を睨む。
電話があったのは二時間ほど前だった。
従業員である出端(でばた)から不意に電話があったのである。用件は非常に簡単だった。
「店の金のことで至急相談したいことがある」
それだけしか言わない出端に加々野は苛ついた。相談の内容をはっきり言え、今は言えない、という押し問答を数回した後、加々野が折れた。
「それで、お前はどうしたいんだ」
苛立ちを隠さない声で訊ねた彼に、出端は店にマンションの鍵を置いておいたから、それを持ってきてほしい。そこで全て話すと言って、電話を切ってしまったのである。
腹の底に怒りがどろりと溜まるのを感じつつ、加々野は自分が経営している店へ急行した。
彼が運営している店は小ぢんまりとした喫茶店で、商店街から少し離れた位置にある隠れ家的な雰囲気がある。それなりに客はいて、運営は順調だ。
いつも通りに店の鍵を開け、事務所に入る。
すると事務所に据えられた防盗金庫の扉が大きく空いていた。中には売り上げやら運転資金の一部やらが収められていたが、何もなくなっている。代わりにマンションの鍵とエントランスから入るための暗証番号と住所と部屋番号が記された紙切れが一枚。
エレベーターの扉が静かに開き、外気が流れ込んできた。
それをきっかけに加々野は怒りに塗れた思考から浮上し、現実へと帰還する。そして、明け方の誰もいないマンションの廊下へと出て大股で歩いた。
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