女子アナのあなの中
売れないお笑い芸人の清水淳平は、キー局の売れっ子アナウンサーである上島杏と交際していた。まだ杏が新人だった頃、小さな番組で共演したことをきっかけに仲良くなった2人は、実は杏の方から熱烈にアプローチして交際に至っていた。2人のデートはもっぱら淳平の家だが、今日も仕事終わりの杏が淳平の家を訪ねてきた。食後に2人でテレビを見ていると、杏が出演した番組が始まって…
ドアチャイムが鳴った音に応えて清水淳平が自宅の玄関ドアを開けると、そこに立っていた女はため息を吐きながら淳平の部屋に入ってきた。
「はぁー、もう、ほんっと疲れた!」
仕事中とは違う、ワントーン低い声で嘆きながら、上島杏は帽子を脱いだ。
目深に被っていた帽子と、小さな顔を覆い隠すマスク、それから縁の太い伊達メガネを外すと、人気ナンバーワン女子アナの素顔が現れる。
「おつかれさま」
淳平は優しく声をかけ、少しやつれた様子の彼女を自宅に招き入れた。
キー局のアナウンサー、つまり大手企業の正社員である彼女の方が、売れないお笑い芸人である自分よりずっときちんとした部屋に住んでいる。
しかし人気アナウンサーである彼女の家は週刊誌連中にとっくに割れていて、張られていることも多いのだそうだ。
それでこうして2人は淳平の家でデートをするのが定番となっているのだった。
「こんな変装、要るのかな?私、ただの会社員だよね?」
いかにも不服そうな声で杏がぼやいた。
「会社員だけど、でも有名人だからさ」
「…時々嫌になるよ、大好きな彼氏と外でデートもできないなんて」
淳平が、帽子で少し乱れた杏の髪を撫でて整えると、杏はこてんと頭を淳平の胸に預けてきた。
よしよしするように杏の頭を撫でながら、淳平は杏の背中にそっと腕を回した。
「今日はね、カレー作ってる。食べる?」
少しの間軽く抱擁して、淳平が声をかけると、杏は彼の腕の中で頷いた。
「よし、じゃぁ準備するから座ってて」
淳平は杏をソファーに座るように促して、自分は台所でカレーを温め直す作業を始めた。
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淳平と杏が知り合ったのは、お互い業界に入ったばかりの頃のことだった。
新入社員とはいえ、一流大卒でしっかりと選ばれた存在である杏は、売れない若手芸人である淳平からすれば既に高嶺の花だったが、小さな情報番組で一緒にロケをしたことがきっかけで仲良くなった。
人に言っても信じてもらえないかもしれないが、杏の方から積極的にアプローチをかけて2人は交際に至った。
新人といってもキー局のアナウンサーである杏と付き合うことに淳平は戸惑いや抵抗感、つまり自信のなさからくる躊躇いが大いにあったわけだが、それでも杏からの熱心なアプローチに絆された形だ。
実際に付き合ってみると、杏はその美しい見た目からは想像できないほど会話上手でよく笑う女だった。
ひとつの映画を一緒に見れば、その後何時間でも語らえるほど2人はコミュニケーションの相性が良かった。
そして相性が良かったのは身体の方もだ。
初めて肌を合わせた日から、不思議とお互いに「ぴったりくるな」と感じていた。
その感覚は回数を重ねるごとに強くなり、若い2人にとってセックスはとても重要なものになっていった。
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