コスプレ個人撮影会
「会いに来てくれて嬉しいですぅ~」なんて言葉と笑顔は勿論ウソ。キモいオタクに囲まれて嬉しいレイヤーなんかいないし、プライベートではみんなイケメン彼氏とイチャイチャしてる。そんなの、私だけじゃないのに…!裏垢がバレてしまったレイヤーは、大ファンだったメガネデブの肉便器に成り下がる。
昔から、私は可愛かった。
小学生頃までは、学校の中でチヤホヤされていれば満足だったけど、大きくなるにつれて私の承認欲求はどんどん強くなっていった。
もっと注目されたい。もっと沢山の人のお姫様でありたい。
そんな気持ちからコスプレイヤーになったのは、中学を卒業する頃だったと思う。
レイヤーの写真なんて加工が当たり前で、実物はクリーチャーなんてことは日常茶飯事だ。
でもやっぱり本当に可愛い子はいるわけで、そういう子が自分より多いカメコに囲まれているとイライラした。
だからお金をかけて、玄人好みの質の高いコスプレをするようになった。
露出の高い衣装で、うっかりを装って、時々サービスショットも撮らせてあげた。
でも、その生活を続けるにはそれ相当のお金が掛かって、そのうち私は…
「うわ、うわぁ…ホンモノのシオンちゃんだぁ…!カワイイ…!」
ホテルの部屋に入ってきたメガネデブの村井は鼻息を荒くしながら、私の頭からつま先までを舐めるように見た。
キモッ…と思いつつ、にっこり笑顔を作って媚を売る。
「呼んでくれてありがとー!今日はシオンだけをいーっぱい撮ってね!」
「うんっ!…あ、ゴメンね、先払いだよね!はい、どうぞ」
村井はそう言って無駄にバタバタした動作でリュックから封筒を取り出した。
封筒が汗で指の型に湿気ていて、マジで気持ち悪い。
「ちょっとだけど、僕からの気持ちも入ってるから…美味しいスイーツでも食べて帰って」
「えー、気にしなくて良かったのにー。でも、ありがとう!」
ホテルでの個人撮影、2時間5万円。
キモイのさえ我慢すれば、効率のいいお小遣い稼ぎだし、太いファンもGETできる。
今日リクエストされたコスプレは、『宇宙戦隊ギャラクシィプリンセス』という深夜ロボットアニメの、ドジっ子お色気担当ソフィア。
「じゃあ、時間が勿体無いから、さっそく撮影会始めよっか!」
私は村井に背を向けて羽織っていた上着を脱いだ。
その瞬間、バチッと大きな音がして首筋に痛みが走り、体が突っ張ったように動かなくなった。
「…ぇ…、…っ…?」
村井は痺れて身動きの取れない私に手錠をかけ、肘掛椅子に大股開きの状態で縛り付けた。
「…いっ、痛い…ねえやめて、どうしてこんなひどいことするの…?お願い、放して…」
内心ブチキレながらも、目に涙を浮かべてしおらしくお願いする。
「…僕、デビューしたばっかりの頃から、シオンちゃんの大ファンでさ。イベントには全部行ったし、グッズもフルコンプしてるし」
「じゃあ、どうして…」
「彼氏がいるくらい別によかったんだ、ファンの前でちゃんとアイドルしてくれてたら。でも、この裏垢は流石にひどすぎるんじゃないかなぁ」
「…えっ…?」
そう言って見せられたスマホの画面。
そこには、私が憂さ晴らしにやっていた、SNSの裏アカウントが表示されていた。
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