紅いレインコートのひと (Page 4)

 彼が真意を掴みかねていると女は満面の笑みを象る。右半面の傷が捩れた。赤い舌が唇を割って現れ、淫靡に動く。

「あの……」

 ようようそれだけ絞り出した蘇芳の言葉を啜るように女の舌が彼の口へ入り込んできた。歯列や歯茎を女の舌先が蹂躙し、暴力的なまでの快感が蘇芳の脳髄を侵す。

 次いで彼女の手が服の下へと潜り込んでくる。濡れた手が冷たく肌が粟立つ。しかし、それもすぐに性的な快感によるものへと変わる。彼女の手が蘇芳の乳首をこりこりと甚振るのだ。

 女のような性感をそのような場所で得ることはないと思っていた蘇芳は面食らう。だが、女から与えられる性感に思考が摩耗していく。

 唇が離れると、ゆったりとした動作でレインコートの前を開けた。レインコートの下には薄桃色の襦袢を身に付けている。下着の類はない。汗かあるいは雨なのか、襦袢は微かに湿っており彼女の肌に張り付いている。

 女性の体の輪郭を蠱惑的に強調する光景に蘇芳は唾を飲み込む。

 不意打ちで与えられた性感に理性が麻痺しかけていた彼にとって、あまりにも強烈な光景だ。

 ふらふらと誘蛾灯に惹かれる羽虫のように彼は女の体へと手を伸ばす。触れると、冷たい。

 ふうふうと蘇芳は息を荒くする。股間はすでに膨張し、ズボンの布地を押し上げていた。

「楽にしてあげましょうねぇ」

「ううっ……」

 鈴口の辺りをズボンの上から刺激され、蘇芳は呻いた。我慢しないと簡単に射精してしまいそうだ。

 脇腹の辺りから慎重に蘇芳は手を上昇させる。彼女の胸の膨らみに触れると、柔らかく張りがあると分かった。もっと触れたいという欲望へ忠実に従い、彼は手を動かす。もう片方の手も同じように乳房に触れる。特別に大きくはないが、形がよく弾力も程よい。子供を育てるための器官でありながら、どしてこれ程に淫らになるのか。

 蘇芳は乱暴に襦袢の前を割った。

 日の光など知らないかのように白い肌が晒され、桜色の乳首に蘇芳はむしゃぶりつく。

「ふっ、くぅっ。はぁっ」

 つんと尖った先端を甘噛みし、舌で転がすと女の口から恍惚とした声が零れる。蘇芳は気を良くしてさらに口で性感を与えた。

 ズボンの上から肉棒を刺激していた女の手が止まり、ジッパーを下げた。そこから内部へと侵入し、先走りで濡れている下着を掻き分け、ついに女の指先が彼の陰茎の先端を捕らえる。

「あああっ」

 情けない声を上げ、思わず蘇芳は腰を引いてしまう。同時に女の掌へと粘度の高い精液をたっぷりと吐き出した。

「おっぉぉ」

 信じられないほどの快感が彼の腰を震わせた。

「もう出ちゃった……」

 女がくすくすと彼の耳元に口を寄せて笑う。馬鹿にしている調子ではなく、幼子をあやすような声音だった。

 ズボンの中から手を引き抜き、女は精液に塗れた掌を舐る。

 射精の余韻に浸っていた蘇芳の服をまくり上げ、女はぺたりと肌を合わせた。

「冷たい」

 ぼんやりとした口調で蘇芳は呟く。

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