雨待ち人 (Page 3)
目を開ければ暗がりに慣れた瞳で佇む石平を捕まえることかできた。彼女はどこか所在なさげな様子で、古道具の間にぽつねんと立ち尽くしている。
「こちらで少し休みませんか?」
蛍伍は低い声で石平に言う。
少し逡巡していたが、おずおずと石平は彼の横に座った。
そのまま何も言わず、じっと暗がりを二人で眺める。
「私の傘は、どこにいったんでしょうか」
ぼそぼそと石平が蛍伍に問うた。遠い目をしている彼女をちらりと盗み見て、蛍伍はなにを言うべきか迷う。だが、いくら迷っていても言葉は頭に浮かんでこない。仕方なく彼は沈黙を続けた。
「急いで、いたんです。濡らしたくないものがあって、それで……」
「石平さん」
相手の言葉を遮り、彼は呼びかけた。ゆっくりと石平が彼を見る。深い洞のような目に果たして自分が映るのか、蛍伍は疑問に感じながら続けた。
「そんなに濡れて寒くありませんか?」
彼女の返事はなく、代わりのように硝子戸が風で揺れる。耳障りな音を立てたが、それも一瞬のこと。店の中は雨音で満たされた。
薄闇の中を泳ぐように重たげな仕草で、蛍伍は石平の頬に手を伸ばす。ひんやりと冷たく、そして雨に濡れていた。頬に張り付いた髪をそっと剥がしてやる。底の知れない穴倉を覗く心持になって、蛍伍は彼女の瞳を間近で見ていたが、やがて目を閉じた。
唇を触れ合わせる。冷たく濡れた彼女の唇を温めるように蛍伍は啄み、舌を這わせた。
唇を離し、再び石平の瞳を覗きこむ。彼女はとろりと熱に蕩けた目で蛍伍を見返す。そのまま見つめ合っていた。すると不意に石平が手を伸ばし、先程の蛍伍がしたように頬に触れる。
その手もまた濡れていた。
いや、手だけではない。石平の体は今しがたまで雨に打たれていたかのように濡れそぼっている。蛍伍は石平を慎重な手付きで抱き寄せた。濡れた体の冷え切った感触に蛍伍は微かに自らの体が震えるのを感じる。だが、じっと彼女を抱き続けた。器物をずっと握っていれば体温が移るように、彼女も体にも温もりが移るようにと。
だが、いつまでたっても石平の体が温もる気配も、ましてや乾く気配もない。
諦めて彼女の背に回していた手を蛍伍は離した。
彼の体温が石平に移らなかったのと同様に、彼の体は微塵も濡れていない。冷たく濡れた感触だけが残っている。
自らの行為の無駄を隠すように、蛍伍は乱暴に石平を押し倒す。
板張りの上がり框の冷たさより、ずっと冷たい石平の体にのしかかり、蛍伍は乱暴に唇を貪る。相手の舌を吸い、絡め合う。同時に手は乳房を濡れたシャツの上から揉みしだく。もう片方の手はジーンズの中へ侵入し、秘所を目指す。
「はぁ、んんぅっ」
石平の声が微かに熱を帯びる。
蛍伍の手が彼女の繁みを掻き分け、割れ目をなぞった。それと並行して石平の首筋を甘噛みし、その跡をなぞるように口付ける。そうしているうちに彼女の秘所がじわじわとぬめりを増す。硬度を増す陰核を指の腹で円を描くように刺激すれば、ぴくぴく足を震わせて石平は快楽に耐えた。
レビューを書く