出さない手紙 (Page 3)
私の思いとは裏腹に、あなたは徐々に私への興味を失っていきました。
私の身体と心が手に入ったので、満足してしまったのでしょうか。
私はもう、あなたなしでは生きていけない身体になっていました。
そこで、子供の頃に家族でドライブに行って道に迷った時に偶然見つけた、あの崖の上で海を見ようと誘ったのです。
あなたの目的は、もちろんセックスでした。
狭い車内で、あなたはコンドームもつけずに私のアナルを好きなだけ犯し、中に射精しました。
事が済んでから、私は車を降りて一緒に海が見たいとあなたに告げました。
そっと指を絡めて夜の海を眺めていると、不意にあなたは「もう、終わりにしよう」と言いましたね。
私は、そう言われることをずっと恐れていました。でも、いつかこんな日が来ることも、分かっていたつもりです。
何も答えない私が泣いていると思ったのか、あなたは私の頭を撫でようとこちらを向きました。
その瞬間、私は思い切りあなたに身体をぶつけ、暗い崖の下へと突き落としたのです。
海へ落ちる瞬間、あなたはどんなことを思ったのでしょうか。
会社での自分の立場?残される妻と子供の未来?
いいえ、散々身体を可愛がってやったのに裏切った私への、憎悪でしょう。
後日、あなたは死体となって発見され、その死は会社に大きな衝撃を与えました。
仕事も順調、家庭も円満、それなのに、自殺するなんて、と。
あなたのお葬式では誰もが泣いていましたが、私は涙の一滴もこぼれませんでした。
何故ならば、あなたの命は、これで私のものになったからです。
初めてのキス、初めてのセックス、そして初めての犯罪までも、私はあなたに捧げました。
あなたが死んだことにより、この手紙を海に落とします。
花束と一緒に。
どうか、どうか。海の底で、私を一生愛してください。』
そこまで読み終えて、私は手紙を折りたたむと真っ白な封筒に入れて花のシールを貼った。
そして海に花束と一緒に落とすと、どちらも音もなく消えた。
背後から、徐々にサイレンの音が聞こえる。
私は目を瞑って、彼の笑顔を思い出そうとした。
(了)
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