デーモンスレイヤー (Page 3)

 放課後のとある学園。教室の1つ。
 カーテンを閉ざして薄暗くしている教室の床には、チョークで魔方陣が描かれている。
 魔方陣を囲むように、数人の男子学生がいた。
 男子学生たちは呪文を唱えている。
 やがて呪文の詠唱が止まった。

「ちぇっ、やっぱダメか」

 男子学生の1人……髪を茶色に染めている少年が残念そうに言う。

「悪魔を召喚して、テストの成績を上げる……いい手段だと思ったんだけどなあ」

「やっぱ悪魔なんかいないのか?」

 別の男子学生がそう言ったときだ。

「いや……いるさ」

 髪を茶色に染めている少年が言う。
 静かな口調……普段の彼の口調ではないので、他の男子学生たちは驚いた。
 男子学生たちの視線は、その少年に向く。

「悪魔はいる……そして召喚者の願いをかなえる」

 男子学生たちの視線の先で、茶色の髪の少年に変化が生じる。
 肉体が大きくなっていく。内側から学生服が破れる。
 彼の肉体は二回りほど大きくなり、身長が2メートル近くになった。
 一緒に悪魔を召喚しようとした彼の身に何が起きたのか……男子学生たちは理解できない。
 男子学生たちが理解できていない間に、彼の肌の色は闇を固めたような真っ黒になる。
 目は血でも吸ったかのように真っ赤になり、頭部からはねじくれた形状の2本のツノが、背中からコウモリのような翼が生えた。

「悪魔はここにいるぞ」

 茶色の髪の少年は、悪魔のような姿に変化した。
 悪魔のような……ではなく、悪魔そのものだ。

「願いをかなえてやる。テストで上位の成績をとれるように……という願いをな」

 男子学生たちは、冗談で悪魔召喚の儀式を行った。
 楽をしてテストで上位の成績をとりたい……そんな思いを抱いてだ。
 まさか本当に悪魔が召喚できるとは、思ってもいなかったことだ。
 それも、一緒に儀式を行った少年の肉体を乗っ取って悪魔がこの世に姿を見せるというのも、完全に予想外であった。
 悪魔を目の前にして、男子学生たちは教室から逃げようとする。
 悪魔の両手が素早く動く。近くにいた2人の男子学生の頭を掴む。
 ビクッと震える2人の男子学生。だが、すぐにピクリとも動かなくなる。
 男子学生の頭から、悪魔は手を離す。その手には人間の心臓のように脈打っている光の玉が握られていた。
 それは人間の魂。
 魂を抜かれた2人の男子学生は床に倒れる。死んでいる。
 他の男子学生たちは急いで教室から出ようとするが、ドアが開かなかった。
 どうしてドアが開かないのか……焦る男子学生たちに、悪魔がゆっくりと迫る。
 悪魔の姿を見て、男子学生たちは悲鳴を上げた……。

 その学園では、死因不明の死体が連続して発見されるという事件が発生するようになった。
 死体となって発見される学生は、いずれも成績上位者である。
 警察は事件と事故の両方で捜査しているが、事件なのか事故なのか分からない状態であった。

◇◇◇

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