早帰りのサラリーマンは電気青姦の夢を見るんですか? (Page 2)
「太陽光と風力から再生可能エネルギーを得てですね」
公園の中の、薄暗く曲がりくねった道を行く。
左横にいる女性は、この道を通れるのがよほどうれしいのか。
俺の左腕を抱いてニコニコ顔で歩いている。
「地中部も通常の二倍の深さという特別な仕様で」
俺も背は低い方じゃない(185)と思ってるが、この女性も中々のもんだ。
ハイヒールのせいもあるのだろうが、俺と目の位置がほぼ同じ。
だから、二の腕に胸のふくらみがジャストフィット!
「Wi-Fiは6G対応可で、衛星との通信でネットと接続していますから」
そんなワケで、女性が何か言っていたが内容はほとんど入ってこなかった。
たぶん今おれ顔真っ赤。ついでにドキドキが止まらねえ。
「バッテリーは災害時を考えて高価なリチウムイオンではなく……」
それでも、こんな美人(しかもうれしそう)にしがみつかれてたら。
そりゃ普通は舞い上がるだろ……
「あの、聞いてます?」
先述の理由により聞いてなかった。
しかし、それが価格交渉でないのは分かっていた。
だから。
「いやゴメン、でもお高いのでしょう?」
と冗談めかして、せっついてみた。
すると。
「高さですか? まあ普通の電柱よりは低いですけど」
??? 電柱?
……ああ、背が高いから電柱ってからかわれてきたんだろうな。
こんな美人でも、高身長は心を歪めるほどの弱点になるのか。
女って大変だねえ……
ではなく。
「いや値段だよ、今からアンタとする価格!」
「え、価格ですか」
いきなりそれか、という顔で見られてしまう。
うう、別に間違ったこと聞いてないのに、なんだこの恥ずかしさは?
「時価の部分が多くて正確なところは」
「いや、そりゃ時価だろうけど」
「はい??」
いかん、なんか話がかみ合ってないぞ。
だがそれは、女性も同じように感じたようで。
「あ、あそこのベンチに座りませんか?」
と言ってきた。
「うわ……」
いつの間にか着いていた、公園のほぼ中央。
そこはちょっとした広場で、その真ん中には花壇。
そして花壇を囲むように、四つのベンチが配されている。
問題は、そのベンチのうち三つがカップルに使われており。
そのいずれもが濃厚なプレイの真っ最中だということだ。
……いや、問題じゃないのか別に。
「さあさ、遠慮なく」
周りを気にする様子もなく、さっさとベンチに座る女性。
自分の隣を指し示してニコニコと。
ううむ、怖いお兄さんが出てくるならこのタイミングだろうが……
「ここは、ちょっと明るすぎるんじゃないかな」
とりあえず様子見で、そんなことを言ってみる。
ベンチの背後、花壇の中央に立っている街路灯。
それに付けられているLEDランプが異常なほどの光量なのだ。
「え、そ、そうですか?」
何故か意外そうな顔になりながら、女性は後ろを向く。
まあ確かに、他のカップルは気にせずにイチャイチャしてるけどな。
「もう少し暗いところの方が……」
と言って気づいた。
風力発電のプロペラやら太陽電池パネルやら衛星アンテナやら付いてる。
これは、つい三か月ほど前に俺が設計した街路灯じゃないか!
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