花陰に果実

・作

ある一軒家を訪れた御岳(みたけ)と高尾(たかお)。高尾はそこでウエディングドレスを身に纏い、眠っている女性を発見する。女性は高尾を他の人物と誤解し、淫らに誘うのだった……。

 沈殿していた空気が揺らいだ。

 扉が開かれ、久方ぶりの外気が室内へと流れ込む。澱んでカビや埃、腐臭の入り混じった入れ替わりに外へ出て行く。

 代わりに踏み込んできたのは薄汚れたツナギを着ている女である。鍵束をじゃらりと鳴らし、ポケットに収めると彼女は扉の中へと足を踏み入れた。

 室内の臭いに顔をしかめ、女は化粧っけのない顔にマスクをつける。次いで鍵をしまったポケットと反対側のポケットを探り、ヘアゴムを取り出した。そして、髪を後頭部で括るため顎を引く。髪を結わうために下を向いた彼女の視線の先には、男物の革靴と女物の靴が仲良く並んでいた。

 三和土と靴にはうっすらと埃が積もり、長らく人の立ち入りがないことが察せられる。

 土足のまま玄関を上がる。

「ちょっと、御岳(みたけ)さん」

 背後から呼びかけられ、女が足を止めた。

 女――御岳が振り返ると玄関から一人の男が顔を出していた。丸眼鏡をかけた面長のひょろりとした男である。

「土足はまずいのですよ」

 扉の前に立ち、男が御岳に言う。

 顔立ちは特に目立つような男ではないが、その風体が少々奇妙だ。詰襟シャツに絣の長着、そして袴を合わせた服装はいわゆる書生のようで、古臭い映画から出てきたような場違いさがある。

「高尾(たかお)」

 低い声で女が男の名前を呼んだ。

「いいから、さっさと入ってきなよ」

「……はぁ」

 煮え切らない返事をして高尾は言われた通りに玄関に入る。

 それを見た御岳が玄関の扉を閉めると、玄関はすっかり暗くなってしまう。

「電気、電気」

 手探りで御岳が玄関の照明スイッチを探し当てるが、押しても反応がない。パチパチと何度か試すが、照明は点かなかった。

「ああ、電気止まってるのか」

「だから灯りを持ってきた方が良いといったじゃないですか。もしくは昼間にするとか、色々とやりようは――」

「はいはい」

 高尾の小言を聞き流し、御岳は土足のまま玄関に上がる。

 そのまま遠慮の欠片もなく内部へと歩を進めた。その背後に足跡と高尾が続く。

 灯りのひとつもなく御岳は廊下を歩き、扉を見つけると片っ端から開けていった。部屋の中には家具などがそっくりそのまま残っている。生活感を失い、暗がりに蹲り埃に塗れている様は獣の死骸のようだった。

 幾つかの部屋を見つけ、御岳はキッチンに辿り着く。しかし、意外にも腐臭はない。微かな黴臭さをマスク越しに感じるが、それ以上の臭いはない。試しに冷蔵庫を開けてみるが、中には数種の調味料が入っているだけだった。

 玄関で感じた腐臭の原因がキッチンだと思っていた御岳は首を傾げる。

「御岳さん」

 離れた場所から呼ばれ、御岳はキッチンを後にした。

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