ヒモの心得 (Page 4)
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「かえちゃん?」
楓が寝室に入ってから30分ほど待って、太一は寝室に入った。
この少しの焦らしが、とっくにその気になっている楓によく効く。
楓の方から返事はない。
太一は入り口の方に背を向けて寝ている楓の後ろからベッドに滑り込み、楓の背中にぴたっとくっついてもう一度呼びかける。
「かーえーちゃん」
「んん…」
太一が後ろから楓の細い腰に腕を回すと、楓はぴくっと反応した。
「ねぇ…今日、だめ?」
「んー、ぅうーん…」
楓の方でも求める気持ちがあるのはわかっているが、行為に至る過程で太一から「お願い」することは大事だ。
「俺めっちゃ我慢してたんだよぉ」
甘ったるい声で、太一は囁いた。
この「お願い」に真実味を持たせるために、太一は平日の夜にも楓に誘いをかけている。
楓が応じないことはわかっているのでしつこくせず、しかし自分は楓とセックスしたいと思っていることを伝えておくために誘うのだ。
耳元にかかる熱を帯びた吐息に、楓はぞくぞくと快感を感じた。
「んんっ」
太一は楓が着ている薄手のTシャツの裾から手を差し込み、直接肌を撫で上げる。
「はぁっ…ん」
楓は抵抗することなく、甘い声を漏らしている。
家着のTシャツの中に楓が下着を身につけていないため、太一の指先はすぐに直に楓の乳房にたどり着いた。
「あっ…」
楓の声が上擦り、少し強張っていた身体から力が抜ける。
太一は楓の乳房を下から優しく揉みしだく。
「んんっ、あ…っ」
大きいが敏感な楓の乳房は柔らかく、ふるふると震える。
この大きな乳房を、普段楓は下着で強く押さえつけて細身のパンツスーツを着こなしている。
性的な目で見られることは仕事の邪魔になると楓は言うが、こうして太一に弄ってもらうのを悦ぶ様はそんな抑圧からの解放を感じさせる。
「かえちゃん…かわいい」
「あぁっ…そんな、やだ…」
太一が楓の乳輪を指でくるくるなぞりながら囁くと、楓は息を荒げる。
「やなの?やめる?」
太一は指の動きを止めて言い、楓の首筋にちゅっと吸い付いた。
楓は背中をぴくっと反応させて、小さく首を振った。
「や…じゃない…」
「やじゃない?したい?」
「んんっ…ぅん、したい…」
消え入りそうな声で、恥ずかしそうに楓が答える。
これからめちゃくちゃに乱れることがわかっているのに、毎回必ずこうして恥ずかしそうにする楓を、太一は可愛らしく思う。
「かえちゃん、かわいい」
職場では厳しく真っ当に仕事に取り組む楓を「かわいい」と言うのは恋人の太一だけだ。
だから楓にとってこの言葉は特別で、いつも楓の心をほぐして淫らにしてしまう。
「あ、あぁっ」
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