人妻玩具 (Page 9)
これで閉店の準備ができた。あとはレジを清算して、売り上げを銀行に預ける準備をして金庫に収めてしまえばいい。
必要なのは店内と使った器具の清掃だ。二人で分担すれば、あっという間に終わる。今までは陽奈子の夫と二人でやっていた作業だが、この一週間は彼女に作業を教えつつこなしてきた。
陽奈子は覚えが良いとはお世辞にも言えない。同じ失敗を何度も繰り返すし、そもそも労働そのものに不慣れな感じがした。
実家とは絶縁したと言っていたが、もしかしたら良家の娘だったのかもしれない。
とはいえ、そんな想像は無意味だ。今、陽奈子は加々野に雇われたアルバイトに過ぎないのだから。
未だにへたり込んでいる陽奈子を無理やり立たせ、彼は客席の清掃を命じた。自分はレジを清算し、釣銭と売り上げを分けていく。小さなレジなので十分ほどで清算が終わる。
売り上げと釣銭を金庫に仕舞い、取って返した加々野は器具とカウンター内の清掃を始めた。不器用に客席の掃き掃除をしている陽奈子をちらちらと見ながらも、彼の手付きは淀みない。十年以上続けてきたことなので、ルーティンとして体が覚えている。
彼が全ての仕事を終えても、まだ陽奈子は客席の掃除を続けていた。加々野は陽奈子に近づき、彼女の出勤初日に教えたのと同じことを我慢強く、繰り返し教える。
「すみません……」
「やっていればそのうち覚える」
加々野にそう言われ、陽奈子は複雑そうな表情で黙り込む。彼女を性的に責めている時と、仕事をしている時のギャップに戸惑っているのだ。彼にしてみれば仕事と楽しみをきっちりと線引きしているに過ぎないだが。
とはいえ、仕事はこれで終わりだ。
陽奈子を連れ、加々野は事務所へと向かう。
事務所の中にはパソコンと予備のカップとエプロン、ロッカーがあり、中型の防盗金庫が据えられている。更衣室の類はない。そもそもエプロンを着けるだけで、わざわざ着替える必要がないのだ。
「ああ、そうだ」
今思い出した、というふうを装い、加々野はロッカーから自分の鞄を取り出した。そして、鞄の中から紙袋を引っ張り出して、陽奈子に差し出す。
「プレゼントだ」
「え……?」
紙袋を押し付けられた陽奈子が困惑した顔で中身を検める。
「せっかくだ。着けてみてくれ。ここで、今すぐ」
観念したように俯いて彼女は、おずおずとブラウスとスラックス脱いで、加々野の前で下着姿になった。それから加々野に渡された紙袋の中から下着を取り出し、息を飲む。
彼女が贈られたそれは、身に着けた時に乳首と陰部が露出するデザインになっていた。下着としての最低限の機能よりも、身に着けた際の淫猥さを際立たせる、そのための装飾品としての意味合いが強い。
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