ひと夏の思い出
祖父の葬式のため、将人は久しぶりに帰郷した。そこで隣の家に住んでいた宮川花に会う。花とは昔、童貞と処女を卒業した仲だった。結婚したと聞いて寂しさを覚えるが、花に誘われるまま関係を持ってしまう。束の間の逢瀬を、将人と花は楽しむのだった。
親戚たちが酒盛りしている広間の隅で、俺はビールをちびちび飲んでいた。
田舎に帰ってくるのは高校卒業以来15年振りだった。祖父の葬儀で帰ってきたのだが、あまり話したこともないので特に感傷もない。
「もしかして将人くん?」
喪服の女性が俺に声をかけてきた。褐色の肌でショートカットなので喪服を着ているとアンバランスな印象を受けた。
「……花ねぇ?」
「あーやっぱり。久しぶりだねえ」
隣の家に住んでいた宮川花だった。ひとつ年上だったので、花ねぇと呼んでいた。
「花ねぇは変わんないね」
「そんなに若く見える?」
「そういうとこが変わんない」
ようやく気軽に話せる相手に会えて、俺はホッとしていた。
「将人くんはなんだかあか抜けたね」
「そうかな」
「うん。いいねえ、田舎はつまんないよ」
本当につまらなさそうに花ねぇがビールを飲んだ。
「花ねぇ、日焼けしてるね」
「じっと店番してるのが性に合わなくて、配達ばっかしてるからね。あ、私、酒屋の息子と結婚したのよ」
「結婚したんだ」
俺がつぶやくと、花ねぇは「ふふーん」と笑った。
「寂しいの? 昔は私にべったりだったもんね」
「……うん。寂しいかな」
花ねぇは俺が童貞卒業した相手だった。そして、花ねぇにとって俺は処女を捧げた相手だった。
「ちょっと外行かない? 飲みすぎちゃった」
花ねぇに誘われて、外に出る。
東京と違い、夜も遅くなると誰もいない。
田んぼのあぜ道を歩きながら昔話に花をさかせる。やがて、神社にたどり着いた。
「将人くんは彼女いるの?」
「うん。けど、ケンカしちゃってさ。だから、なんとなく帰ってきたっていうか」
「ふうん」
花ねぇが近づいてきた。線香の匂いに混じって、甘い花のような香りがする。
「じゃあ、溜まってるんじゃない?」
花ねぇの手が俺のズボンのチャックを下ろし、下着をずらした。
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