彼女の未練と彼女への未練 (Page 6)

 彼と身体を重ねたことがないわけではない。
 でも、だから余計に、彼の固い屹立を目にするたび、お腹の奥が疼いて仕方がなかった。
 彼の精が喉を通るたびに、彼の気持ちよさそうな顔を見るたびに、幸福感が溢れた。
 でもそれと同じだけ、物足りなさが溢れた。
 今日こそやっと。

「ん、ああ……あふ」

 彼の指が彼しか触れたことのない場所に触れ、体中が震えた。
 蕩けるような痺れが、太腿の付け根から腰、背中を通って頭の芯を抜け、目の前に小さな火花を散らす。

「ん、はあ……。きもちい」

 彼が使っているデスクに体を預け、左脚を彼に抱えてもらって脚を広げたまま腰を付き出したカナは、心の底からの悦声を漏らした。

「カナ、トロトロになってる。熱くて、ずっと触ってたいよ」

「ん、もっと触って。奥まで、いいーーんあっ!」

 彼の指がにゅるりと潜り込んできて、最後まで言わせてもらえなかった。
 柔肉の隙間を彼の太い指がウネウネと動いて襞を掻き乱す。
 ピリピリとした痺れが際限なく発生し、カナの身体中を駆け巡る。
 彼女を支えるために彼が触れている太腿や背中、中指以外の指が触れる柔肉や尻肉が熱く滾り、刺激を増幅している。

「んくう、こき、浩紀いっ! こうーー」

 ほんの少しだけ曲げられた指が、カナの奥にある少し固くなったところをトントンと叩き、カナの声帯が固まった。
 同時に、彼への想いの塊が爆発する。

「ん、んんん! いあっ、イっく、イクイク!」

 カクカクと腰が痙攣し、彼に抱えられた脚がピンと伸びて震える。
 目の前が白く染まり、あちこちで火花が散った。

「ん、あああ、ああ! あ、んあ、は、はふ、ふ、ふう、はあ、はあ」

 気が付いたら彼のデスクの隣にまで身体を投げ出し、汗を飛び散らせていた。
 ここは、以前カナが使っていたデスクだ。
 今では彼女が使っていた形跡は一切なく、可愛らしい文具や人形が並んでいる。
 胸の奥を、チクリと何かが突き刺した。

「カナ、ごめん。ちょっと激しかったかも」

 浩紀が心配げにそう言って指を抜こうとしたので、カナは慌てて太腿を閉じた。
 太腿から逃れようとクニクニと動く彼の指が、カナに新たな快感を与えてくれる。

「ん、んん、いやん。えっちい」

「か、カナ、ちょっと太腿の力抜いて」

「んはあ、はあ。……もっともっとお」

 カナは体を起こし、彼の腕に抱きつくようにして懇願した。
 隣のデスクをちらりと見たあと、上目遣いで彼を見上げる。
 今の彼は、私だけのものだ。
 愛しさが膨らんで、動いていないはずの鼓動が早くなる。
 くちゅ、ぷちゅぷちゅ

「ん、んはあ、浩紀い、ん、んむ!」

 彼の指が少し動いたのと同時に、彼の唇がカナの口を塞いだ。
 真っ黒い彼の瞳がカナを見つめてくる。
 その目は、初めて彼と結ばれた時を思い出させる光を宿らせていた。
 今日こそ、彼の心に火をつけられたのが分かった。幸せが込み上げる。
 口の中に彼の舌が潜り込んできて、舌や頬の裏を優しく愛撫した。
 送り込まれてきた甘い唾液をコクリと飲んで喉を潤すと、体中が蕩けて力が抜ける。

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