彼女の未練と彼女への未練
島田浩紀《しまだこうき》は毎晩残業し、誰もいないオフィスで恋人の水本カナ《みずもとかな》に精飲させていたが、最後までやることは決してない。なぜなら彼はカナとの関係を終わらせたくないからだ。しかし欲求を募らせるカナがあの手この手で誘い、浩紀はついに彼女を抱いた。
「ん、ふんむ、んん」
俺の前に跪いて小さな口いっぱいに肉槍を頬張った水本カナが、形の整ったきれいな眉を苦しげに寄せた。
少し目尻の上がったアーモンド型の瞳の端には涙が浮かび、小さな小鼻を開いてなんとか呼吸している。
無邪気な笑顔でコロコロと笑う彼女の苦しそうな顔は、なんとも嗜虐心をそそる。
そんな俺の心を見透かしたようにカナの舌が肉竿に巻き付き、口全体がぎゅっと抱きつくように吸い付いてくる。
腰の奥に甘い痺れが走り、オフィス内の静けさをごまかしている深夜ラジオの他愛のない話が耳に届かなくなる。
「う、んん」
俺は腰を突き出したい欲求をなんとか抑えて呻き、彼女の細い髪をそっと撫でた。
明るい色に染められた長い髪はつるつるで、ずっと触っていたいほど触り心地が良い。
彼女が上目遣いに俺を見て、嬉しげに目を細める。
「ぷはあ。……きもちい?」
満面の笑みを浮かべた彼女の唇と俺の肉槍の先端の間を、何本かの銀色の糸が伸びて消えた。
グロテスクな肉槍とは対照的なあどけない笑顔が、たまらなくエロい。
「あ、ああ、すごく」
「そか、嬉し」
カナは目を糸のように細くし、涎と我慢汁を気にする風もなく屹立した肉棒に頬ずりする。
『……日水曜日のニュースです。政府は昨年度の出生率が1.0を下回ったことを受け……』
音楽番組の幕間を縫う真面目なニュースのセリフに、自分が残業の真っ最中だったと思い出した。
もちろん広いオフィスには浩紀しか残っておらず、照明も浩紀のデスクの周囲だけを照らしているだけだから、慌てることはない。
しかし昼間は同僚たちが忙しく働いているオフィスという空間での行為に、浩紀は少し後ろめたさを感じていた。
「むう。何考えてるのっ?」
少し頬を膨らませたカナが横笛を吹くように肉茎に唇を寄せ、チロチロと舌で突くように舐め始めた。
「あ、それ、ちょ、待っ」
「んふふ。らめ」
彼女は嬉しそうに舌を出し、裏筋からカリの裏を重点的に舌で舐め始める。
俺は溜まらず彼女の頭を掴んで腰を突き出した。
少し驚いたように目を開いたカナだったが、何の抵抗もせず、焦げ茶色の瞳をうっとりと蕩けさせる。
「ん、んふ……。無理矢理がいい?」
「あ、いや……ごめん」
俺はハッとして答え、彼女の頭から手を離した。
細くてキラキラ光るカナの髪の毛が、さらさらと流れる。
彼女も蕩けていた目をぱちくりとさせ、面白がるような笑顔になった。
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