彼氏ですから (Page 4)
「これから和史ん家、行こうよ。いいっしょ?」
「いいですけど……」
なんで機嫌が悪かったんですかとは訊けず、和史は了承する。何はともあれ、いつも通りの様子に戻ったようで、彼は胸の内で安堵した。
それから二人はコンビニに寄って適当な食べ物と飲み物を購入し、和史の家へと向かう。
和史の住処は築年数が彼の人生の倍程度はあるオンボロアパートである。駅からも遠く、買い物にも少々不便だが、とにかく家賃が安い。
そんなボロアパートの一戸で和史と美織はコンビニ弁当を腹に入れ、床とベッドに座ってそれぞれ本を読み、スマホを弄っていた。
「ねえ、帰るのめんどいから泊っていい?」
スマホを枕の上に放り出し、美織が唐突に言い出す。
「前もそんなこと言ってませんでしたっけ?」
「言ったかもしんない」
体を起こし、美織がベッドの上から足を下ろした。彼女の両足が垂れた先には和史がいる。左右の足がちょうど和史の両肩の辺りにあって、ジェットコースターの安全バーのように彼を拘束した。
「わたし、店で先払いしたじゃん。和史は手伝ってくんなかったなー」
先払いと言われて和史は店での口淫を思い出した。
「やめましょうよ、マズいですって」
「ヤリ逃げすんの?」
「ヤリ逃げって……、バイトとはいえ、職場であんなことするのはマズイですよ」
「じゃあいいじゃん。ここ和史ん家だし」
「そりぁまあ、そうですけど」
「あー、もうっ!」
ぎゅっと美織の足が和史の首に巻き付く。
「ぐぇっ」
「わたしが、和史としたいって言ってんのっ」
さらに足の締め付けが強くなり、和史の後頭部に美織の股間が押し当てられた。本気で首を絞め上げられて声も出せず、和史はタップして限界を伝える。その必死さが伝わったのか、美織は彼の首を解放した。
再び和史の両肩から美織の足が垂れる。彼はその足の間で身を翻す。すると二人の位置関係が店での行為と反対になった。
さらに行為も反転する。
今度は和史がズボン越しに美織の股間に顔を押し当てた。鼻先に布地と、その向こうにある女性器の感触が伝わる。
「んぅっ」
声を上げ、美織が和史の頭を押さえるような格好になった。それに構わず、和史はぐりぐりと顔を動かしてズボン越しの口淫を続ける。次第に彼女の手からは力が抜け、変わるように彼女の体温が上がるのを感じた。
「脱がしますね」
「……うん」
微かな逡巡の後に美織が首肯する。
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