ケジメはつけた (Page 6)
「今日は、みっともなく怒ってしまってすみませんでした。沢登さんの段取りが悪いうえに『例の股間に霧吹き』があったものですから」
「悪いのはこちらですから、気になさらないでください。電話ではなんですから、どこか飲みにでも行きますか? といっても、洗い髪にバスローブなんですけどね(笑)」
「相川さんの部屋で飲むのは? オバサンとオジサンだから、問題ないでしょ?(笑)」
そう言うと、酒井ジャーマネは近くでアルコールと氷を大量に買い込んできて、邦夫の部屋に来たのだった。
酒井は、身長が170cm前後でスッピンに近く“引退した元アスリート”のような雰囲気を持つ女性だった。イベントの内規で綿パンを履いていて、尻が大きめなのかパンティ・ラインがくっきりと見えていた。
「いやだぁ、ジロジロ見ないでくださいおよ。パン線がモロなんですからぁ。Tバックを穿き忘れちゃったんで、恥ずかしいじゃないですか」
と、顔を赤らめていた。42歳・独身で結婚歴はないそうだ。
「それにしても、今日の立ち回りにはスッキリしましたよ。沢登さんを海に投げ込んじゃうんですもん」
「ヤラセですよ、ヤラセ。私は平和主義者ですから」
「代理店にいる友人に聞きましたよ。若い頃は、いろいろな武勇伝があるみたいですね」
確かに、そんな一面もあったかも知れない。
傍若無人に振る舞う外タレのボディガード2人を相手に「これじゃぁ、手加減できないぞ」と言って、肋骨を折られながらも相手の腕を1本折り、もうひとりの膝の靭帯を延ばしきってやった事もあった。当然、外タレはおとなしくなって撮影はスムーズに進められたのだった。
邦夫が稽古していた柔道場は、有段者同士になると「研究会」と称して締め技・関節技もアリの試合形式でやっていたのである。
それはさておき、明日の配置の確認(特に山崎のポジション)だけは素面のうちに済ませて、それからはお互いに口数も少なくビールやハイボールを飲み続けたのだった。
今日の酒井の癇癪も、コロナ自粛も明けて「やっと入った仕事」だったのでヤル気ばかりが空回りしたみたいだと反省していた。
「それはウチの会社も同じですよ。思ったよりも仕事がないからなぁ」
と、話しがコロナウイルスの自粛に移ったところで、
「ところでさぁ、自粛って言うけども不特定多数はマズイとしても決まった相手なら、キスくらいはヤるよね?」
と、聞いてみた。これは、邦夫の単なる好奇心からの質問だった。何せ、データがデリ嬢のミユキしかいないので、参考にはならないからだ。
「私には、ちょっと。コロナに関係なく17年も男性と付き合ってもいないので…」
「ワンナイトも?」
「そんなの、あるわけないじゃないですかぁ」
笑いながら背中を叩いてきた。その手首を掴んだ邦夫は、いきなり酒井の体を自分に引き寄せてキスをした。驚いて、目を大きくしている酒井に向かって、
「オバサンとオジサンならイイんでしょ? さっき、電話で言ってたよね」
そう言いながら邦夫は、今度はディープなヤツで口を塞いだのだった。
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