禁欲の果て (Page 2)
「禁欲?」
「そう、次に会うまでの1ヶ月、お互いセックスもオナニーも禁止するの」
「セックスはそりゃしないでしょ」
「ふふふ、わかってる」
「オナニーも禁止?俺そんな生活したことないよ」
「私だって、武と知り合う前から日課みたいなもんだったけど」
「てか正直明日会えると思ってたから、今すでにちょっと溜めてるとこあるんだけど…」
「はははっ、じゃぁ武は禁欲1ヶ月以上になるね」
「まじか…俺の性欲知ってるでしょ?やばいよ」
「それはお互い様じゃん。でも一緒に我慢して来月会ったらさぁ…」
「あ、それ想像しただけですごそう」
「でしょ?思い切って来月は月曜有給取ってもいいかも」
「…わかった、やってみよう」
こういった流れで、2人は1ヶ月の禁欲生活を始めた。
言ってしまえばこれは口約束であり、本当に自慰行為を一切しなかったかというのは証明しようがない。
しかし2人はどちらも実際に禁欲生活を送ったし、相手が自分と同様に約束を守っているかについて疑わなかった。
それは恋人としてというより、セックスパートナーとして相手を信用しているからといった方が適当だろう。
より良いセックスができる可能性に対して貪欲であることは、それまでの3年間の付き合いで互いに理解し合っていた。
だから、この禁欲生活は2人にとって初めてのことだったが、それでも我慢しきることができたのである。
「なんか、スカート短くない?」
車は、人気の少ない地方都市の国道を淡々と走る。エアコンは付けているのに、なんとなくむっとするような暑さを武は感じた。
それは自分が久しぶりのセックスを前に興奮しているからかもしれなかった。
「あー、やっぱり?」
普段はパンツスタイルが多い凛花が珍しく膝上丈のミニスカートを履いているので、駅で落ち合った時から武は興奮が高まっていた。
「買ったの?」
「うん…我慢してる最中すごいムラムラしちゃってさ、露出高い服とか目について」
「なにそれエロ」
「買ってから、こんなのいつ着るんだろとか冷静になるんだけど、まぁ今回は…ちょっと特別ってことで」
凛花は恥ずかしそうに答えながら、座ったことで上がった裾を押さえるように手を動かした。
「こっちに来るまで、すげー見られたんじゃない?」
「あー、うん、多分…いや、どうかな」
凛花の住む東京の家から武のいる街の駅まで、2〜3時間はかかる。
その間ずっと、人目に晒されて凛花も興奮していたはずだと武は思った。
「てか今日上に着てるのもエロいじゃん」
信号待ちの間に、武はわざとじっと凛花の身体を見て言った。
凛花は胸元が大きく開いたタンクトップに、薄手のシャツをゆったり羽織っていた。
シャツが前開きなので、中のタンクトップがかたどる彼女のボディラインは剥き出しになっている。
その豊かな乳房がタンクトップをパツパツに張らせている様は、すれ違う男の目をことごとく引きつけたに違いなかった。
遠恋。
まるさん作、推し。
遠恋あるある。
悩めるケミん さん 2022年9月3日