この子の二十歳のお祝いに

・作

女子大生の芽依は、20歳の誕生日に初めてホテルのバーへ行った。そこで容姿端麗な青年実業家ユウジに出会った。バーでいいムードになった芽依は、ユウジの部屋へ誘われる。そしてユウジの部屋で、芽依はキモ男に凌辱されてしまう――

 二十歳(はたち)――

 以前の日本なら成人となる年齢で、選挙権もこの年齢から与えられていた。今では成人年齢は18歳に引き下げられてしまったが、それでも飲酒や喫煙が認められるのは20歳からであり、やはりいよいよ大人として認められるひとつの区切りの年齢である。

 女子大生の芽依(めい)も、今年20歳を迎えた。タバコには興味はないが、オシャレにお酒を飲む女性は以前からの憧れで、いよいよアルコール・デビューの日を迎えた。

 そしてあるホテルのバー。

「バーテンさん? お勧めのカクテルをおねがい」

 バーテンは黙ってうなずくと、慣れた手つきでシェイカーを振り、黙って鮮やかな緑色をしたカクテルを芽依の前に置いた。

「美味しい! 甘くて飲みやすいわ!」

 バーテンは黙って微笑み、静かにグラスを磨き続けた。芽依は何杯かカクテルを堪能し、したたかに酔いが回っていた。

「?」

 芽依の目の前に、オーダーしていないカクテルが置かれた。バーテンが黙って目配せすると、そこには20代後半だろうか? 容姿端麗な青年実業家風の男がいた。

「……あちらのお客さまからです……」

 バーテンがボソッと呟いた。青年実業家風の男は、フッと微笑んだ。

(えっ? あたしに?)

 芽依の火照った頬は、ますます赤味をさした。

(……格好いい……)

 芽依は呆然とその男を見つめていた。と、男は席を立ち、ゆっくりと芽依の隣に座った。

「はじめまして。こちらのお店は初めてですか?」

「は! はい! あ、あたし、今日が二十歳の誕生日で、お酒デビューなんです!」

 芽依はあたふたしながら答えた。男はふふっと笑い、

「初めてでこちらのお店を選ぶなんて、なかなかセンスが良いですね? あ! 申し遅れました。私は北村ユウジと申します」

 そう言うと、ユウジはスッと名刺を差し出した。

「ユウジさんですか! あたし、芽依って言います!」

 芽依はとりあえず深々と頭を下げた。

「ハハッ! そんなにかしこまらなくてもいいですよ! もっと気楽に楽しみましょうよ!」

「あ! は! ハイッ!」

 そう言いながら、芽依はユウジの瞳に吸い込まれていた。

(こんな素敵な男性とご一緒出来るなんて! 最高な夜じゃない!)

 しかしこの時の芽依は、その後の惨事など微塵も想像していなかった――

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