千夜よりも永く君思ふ (Page 3)
そして、ついに彼の唇は千夜の秘所へと辿り着く。
「そこは、口でなさると」
身は清めてきたものの、それでも羞恥が千夜を動かした。足を閉じ抵抗してしまう。だが、易々と彼はその防備を突破し、つんと勃起した陰核を舌先で転がしたのだ。
「……!」
声歩上げることもできず、千夜は快楽に悶える。あまりに強い快感を与えられ、瞼の裏が白んでいた。ぎゅっと体の下に敷かれた清史郎の着物を掴んで耐えるが、それも束の間のこと。彼女は盛大に潮を吹いて達した。
「ああ、そんな」
自らの吹いた潮で清史郎の顔を濡らしてしまった。その事実が羞恥と罪悪感で千夜を苛む。
「悦んでもらえて、俺は」
そう言って清史郎が見せつけた男根は臍まで反り返っていた。荒々しく血管を受けあがらせたそれは、千夜の夫とは比べ物にならぬほど逞しい。
「我慢が出来そうにありません。乱暴になってしまうかもしれません。だから貴女が怖いのなら……」
しかし、男根の猛々しさとは裏腹に彼の声音は静かで、千夜を傷つけてしまわぬようにと心を砕いていることが分かる。
ゆっくりと羞恥を抑え、千夜は足を広げた。
「お願いします。清史郎様、わたくしとひとつになってください」
清史郎は彼女に口づけ、慎重に中へと入っていく。
「ひぃん」
知らない。千夜は素直にそう思った。夫の挿入は痛みを耐え、虚しさを抱え込むだけのものに過ぎない。それなのに清史郎の挿入は脳天まで貫かれるような、快楽の連続であった。耐えきれるものではない。ぴくぴくと体が千夜の意志を離れ、軽い絶頂の波に痙攣していた。
「一番奥まで入りました」
清史郎が千夜の耳元で囁く。
答えことなどできず膣の奥底、子宮の入り口を甘く突かれる感触に千夜は酔っていた。
「ああああぁぁっ」
男根が引き抜かれ、また一番奥まで刺し貫かれる。痛みなど微塵もない。愛蜜を滴らせ、膣を蠢かせて千夜は清史郎をまさに貪っていた。
彼も千夜の腰を掴み、容赦なく腰を振る。結合部からは泡立った蜜が床に滴り、小さな水溜まりでも作りそうだ。
「千夜さん」
切羽詰まった声で清史郎が叫ぶ。
男根が膨張し、ぐっと硬さを増す。千夜はそれが射精の兆候であると経験上知っていた。だが、清史郎のそれは千夜をさらに一つ上の絶頂に導くものであった。ぷつりと何かが切れたような感覚が背筋を這い上り、脳髄で爆発する。
千夜の一番奥で清史郎が精を放つ。
そのことが我が事のように分かり、二人分の快感を体験した。
一滴たりとも零さぬように千夜の中が蠢き、清史郎の精を搾り取る。
「千夜さん」
清史郎が千夜を抱き締めた。
これで別れだと言われている気がした。
最初から分かっていたのだ。一夜限りの逢瀬だと。
言葉にできぬだけで、別れるために体を重ねたのだ。
この逞しく優しい腕に千夜が抱かれることは生涯ない。
けれど、と千夜は思った。
一夜の想いが実り、この腕に抱くことが叶うなら。
きっと自分は生きてゆけるはずだ、と。
(了)
千夜よりも永く君思ふ
ぜひ、読むべきです。
紳士 さん 2020年12月16日