迷子の夜に (Page 3)

「え、なんで泣いてるの?」
 司はおろおろして訊いた。とりあえずちひろにシーツをかけてあげた。
 処女を失ったのが悲しいのかと焦り、今更だろと腹を立てる。

「私……修学旅行の途中で……」
 知ってる、と言いかけて口をつぐむ。
「5人で班行動していて、はぐれて……やっと見つけたら私の事なんて気づいてないみたいに笑ってて……」
「うん……」
「学校で一緒にいる時も合わせて笑っているだけだったけど……私なんかいなくてもいいだって思ったら、気づかれないように逆方向に走ってた……」
 クラスに友達がいなくて、陽キャのグループに何とか入ったはいいものの、ついていくだけで居心地悪いやつか? と司は思った。

「お父さんとお母さんは出来が良くて可愛いお姉ちゃんばっかり大事にしてるし……」
(家にも居場所ないのか……)
「だから、私でも誰かの役に立てたって思うと……嬉しくて……」

 司は息を飲んで、そして口元を手で覆った。
(ヤバイだろ、これ……)
 胸の奥が痛いような苦しいような気分になる。雑に扱ったのを申しわけなく思う。
(というか、悪い大人にだまされるやつだろ、これ)
 それは俺かと内心突っ込みつつ、質問する。
「お金はなんで欲しいの?」
「このまま東京に住むんだったら、お金がいるから……」
 無理だろと司は頭を抱えた。

 狭い世界で生きていたから分からないかと思ってから真顔になる。
(俺もだ。あの会社しか知らない)

「……あのさ、ちひろちゃん」
「はい」
「さっき、イッてないよね? 痛いばっかでごめん。ちゃんと気持ち良くするから」
 シーツをどける。恥ずかしそうに体を隠す姿に欲情し、自身に再びコンドームをつける。怯えたように膝を閉じたちひろに、安心させるように穏やかに話しかける。
「大丈夫、痛くしないから」
 ちひろは視線をさ迷わせてから、ゆっくり足を開いた。

 さっきよりは痛くないが、押し広げられる感覚に、ちひろは体を強張らせた。
 男はすぐに動かず、ちひろの胸に吸いついてきた。
「あっ」
 暖かい舌が乳房を這う。乳首を舌で形をなぞり、焦らすように外して乳輪を舐める。反対側はつままれて、指の腹でこねられたり爪を立てたりと刺激された。

「あ……」
 胸の先がジンとしびれるようで、ちひろは男の肩をつかんだ。力が入らなくて押しのけられない。
「はあっ……あ……」
 声に甘さがにじんできたのを聞きつけたのか、男が腰を動かし始めた。トントンと軽く奥を突く動きに、お腹の奥が形になじんで、じんわりと快感がわき出してくる。
「ひん、ふああっ」
 痛みが消えていくと、熱さを感じた。自分を欲しがっている熱さが嬉しくて、また泣きそうになる。

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