迷子の夜に

・作

リストラされた大城司は夜の街でうずくまっている女子校生に声をかけた。冗談で言った一晩いくらの言葉に、いくらなら買ってもらえるのかと聞かれて、成り行きでホテルに行く事になる。その女子校生、下寺ちひろの事情を知って次第に心を通わせていく。

「どうしたの? 迷子?」
 華やかな夜の街から隠れるようにビルとビルの間にうずくまっている女子校生に大城司が声をかけたのは、単なる気まぐれだった。
 高校卒業後から7年間勤めてきた会社にリストラされて、もやもやする気持ちを抱えてふらふら歩いていた所で、いつもならスルーしていた。

 女子校生は東京に住んでいるのではないのだろう、あか抜けない田舎っぽさが目立つ。セーラー服を着て、眼鏡をかけて髪を後ろでひとつにまとめている。

「夜遅くにひとりでいたら危ないよ。一晩いくら、なんて奴が寄ってくるよ」
「……いくらだったら買ってもらえるんですか」
「え?」
「私、一晩いくらですか」
 真剣な様子で眼鏡の奥からまっすぐに見つめてきた。

「いくらって……」
 相場は分からないなと思い、適当に答える。
「3万。処女なら5万」
「それでいいです。買って下さい」
「えー……」
 司は頭を掻いた。

 普段なら交番に連れていく所だが、リストラされて気持ちはグチャグチャに乱れている。投げやりに悪い事をしてもいいかと考えてしまっていた。
「分かった。じゃあホテルに行こうか」

 これからする事を分からせるために、内装が派手めのラブホテルを選んだ。
 シャワーを浴び、女子校生が浴びている間に学生カバンの中を確かめてみた。学生証を眺めてつぶやく。
「ずいぶん遠い所から来てるな……ん?」
 ガサ、と出てきたのは修学旅行のしおりだった。
「……ふーん」
 元通りに戻してビール缶を開ける。

「あの……お風呂、上がりました」
 バスローブを着た女子校生がおずおずと近づいてきた。
「隣に座って」
「……はい」
 女子校生がベッドに座ると、司はすぐさま押し倒した。
 女子校生は声も出せず、驚いて目を見開いた。

「しようか」
 バスローブの襟に手をかけると、グッと引っ張り返してきた。
「名前は?」
 固い表情で見返してくる。
「君の名前」
「……下寺ちひろです」
「ちひろちゃん、覚悟しようよ。お金、欲しくないの?」
 ちひろは黙ったままだったが、襟をつかむ手から力が抜けていった。

 バスローブの前をはだけると、成長途中の胸があらわになった。そのままじっと見ていると、ちひろが絞り出すように言った。
「……しないんですか」
「してるよ。これは視姦って言って、視線で犯してるんだ。見られてちひろちゃんの乳首、ちょっとふっくらしてきたよ」
「嘘……」
 否定しながらも、確認しようとちひろが自分の胸を見下ろした。

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