メンヘラ彼女と喧嘩の後は (Page 2)
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智也と奈々はマッチングアプリで出会った。
最初は互いに身体目当てだったのだが、セックスがあまりに「良い」ので、交際するようになって2年が経つ。
一緒に暮らすようになってからはもう1年だ。
智也がひとりで出かけている時間に、奈々がしょっちゅう連絡をよこすのはいつものことで、それに返信がないと帰宅後に不機嫌になって詰められるのもいつものことだ。
嫉妬深くて束縛したがり、その上嫉妬のために情緒不安定になる女性を嫌がる男は世の中に多いが、智也はそんな奈々の態度を本心から嫌だと思ったことは1度もない。
自分を縛ろうとするのは、奈々がそれだけ自分を必要としているからなのだと思っているし、これほど強烈に求められるのは実のところ智也にとって「快感」であった。
嫉妬に狂った時の奈々の目は、ただひたすらに自分だけを映している。
この世にただ2人きりになったような錯覚を起こさせる奈々の態度に呆れて見せるが、智也の方もそれほどに求められる今の快楽を手放したくないのである。
何より、こうして不安定になった奈々を宥めて持ち込むセックスの味が、智也にとっては絶対に忘れられない強烈な旨みなのだった。
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シャワーを浴びてリビングに戻ると、同じ格好のまま奈々がソファーでうずくまっている。
うんざりしたため息とも、ただ長く息を吐いただけとも取れるように深く息を吐いて、奈々の隣に智也は座った。
ぴくんと肩を震わせた奈々が、顔を上げてこちらを見る。
その目には、先ほどの怒りはなくなっており、代わりに今度は不安が宿っていた。
「…智也…怒ってる?」
「怒ってないよ」
激しい嫉妬をぶつけた後、少し時間があくとだいたい奈々はこうなる。
智也は穏やかなトーンで答えた。
「ごめん…ごめんね…」
ほとんど涙声で奈々は謝った。
「智也と離れたくないの…他の人にとられるかもって思ったら怖くて…」
「うん」
「私には智也だけだから…」
「うん」
「お願い…」
言いながら奈々は智也に抱きついてきた。
首元に腕を回してぎゅっと抱きしめ、耳元で奈々が言う。
「嫌いにならないで…」
こうしていつも2人のスイッチが入る。
「ならないよ」
智也は答えると奈々の身体を引き剥がし、キスをした。
少し強引に唇をこじ開け、すぐに舌を差し込むと、奈々は身体を震わせて応じる。
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