素子ちゃんは皆のアイドル (Page 2)
心を決めた俺たちの動きは速かった。
実家から大学のそばの下宿に帰ろうとする素子ちゃんに俺が声を掛けて、開店予定のお店のテナントに誘い込む。
当然、誰も来るはずはない。
もちろん、家を出てしまっているので、年寄り達は素子ちゃんは大学に戻ったとしか思わないはずだ。
あとは俺が最後の仕上げをするだけ。
「もう、あんまり遅くなると明日の講義がきついんだけど?」
まったく俺のことを疑っていない素子ちゃんに振り返る。
「ごめんね。でも、もうちょっと掛かるんだよ」
言葉と同時に最大出力のスタンガンを押し当てる。
バチッという嫌な音とともに崩れ落ちる素子ちゃん。
流石に海外から輸入した特別製は威力が違う。
俺は、気絶した素子ちゃんに口にガムテープを貼り、声が出ないようにした上で、さらに後ろ手に手錠を掛ける。
米袋の中に素子ちゃんを入れると、テナントの裏に止めてあったレンタカーのハイエースに積み込むと、最初に素子ちゃんのアパートへと向かった。
「頼むからまだ起きないでくれよ……」
人がいないのを確認してから素子ちゃんの部屋のポストに電源を切った彼女のスマホを投げ入れる。
これで全ての準備が整った。
俺は車を商店街の仲間達の待つ町外れのラブホテルへと向けた。
もちろん、ここのオーナーも商店街の若い衆の一人だ。
「上手くいったぞ。ほら、お姫様を寝かせるベッドはどこだ?」
「一番良い部屋を用意しておいたぞ」
ホテルの持ち主であるちょっと太めの坊主頭が偉そうにそう言った。
ただそいつが言うように、場末のホテルには分部相応の天蓋付きのキングサイズのベッドだった。
「何でこんな場末のホテルにこんな部屋あるんだよ……」
「いや、もしかしたら使うことあるかも知れないし……、っていうかやり方は違ったけど、予定通りなんだよ!」
ああ、こいつも素子ちゃんに憧れてたんだったなと、その言葉で全て悟った。
俺はちょっと申し訳なさを感じながら、米袋から素子ちゃんを出す。
あぁ、という呻くような声が部屋に居た男達全てから湧き上がる。
数えてみると二桁を超えている。
どうやら商店街の若い衆全員が集まったらしい。
その中で一人の茶髪が進み出て俺に声を掛けた。
「しかし、お前も無茶苦茶するなあ、というかホントに大丈夫なのかよ……」
「大丈夫にできるかどうかは俺たち次第だ。で、最初は誰からいく?」
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