憧れの女上司の誘惑にウブな後輩男子は陥落する
ある夜、眼鏡の似合う女上司氷高綺音に連れられて、後輩の荻原憲吾は会社の接待に使う料亭に来ていた。綺音のことを憎からず思っていた憲吾はこの機会に告白を試みるのだが、綺音の反応は予想外のものだった。綺音の性技の前に、憲吾はあっさりと放出してしまう。果たして憲吾の思いの行方はいかに。
ある夜、氷高綺音は部下の荻原憲吾を伴って、行きつけの料亭へと赴いていた。
普段から接待に使うことが多いためか、綺音に気負いなどは見られない。
上得意相手にしか使わない離れに通されても、まったく態度が変わることはなかった。
一方で、突然お供を命じられた憲吾の方は、そわそわと落ち着かない様子である。
その原因は部屋に入ってすぐの綺音の言葉だった。
「憲吾君、今日は私の横じゃなくて、対面に座ってね」
「えっと、それは……」
要するに、今夜のこの席は接待ではないということを意味していた。
しかし、なぜ自分が呼ばれたのか、憲吾は分からなかった。
綺音も当然という空気を出して何も説明してくれない。
憲吾は困惑したまま、改めて目の前でお茶をすすっている綺音を眺める。
染めているとは思えないほど自然なブロンド。
白磁のような肌。
そして、銀縁の眼鏡。
細い金属のフレームが理知的でできる女という印象を与えていた。
「えっと、綺音さん。今夜は何かあるんですか?」
「何もないわよ。ただ、貴方と夕食をと思っただけよ。先日の一件でここの無料使用権を報奨でもらったから、せっかくだからね」
確かに綺音のチームの一員として、大きな仕事を片付けた時、褒賞をもらっていたのは知っていた。
しかし、だからといって自分がここに呼ばれた理由としてはよく分からない。
だけど、もしかしたらこれは好機なんではないだろうか、憲吾はそう思っていた。
憲吾は綺音に憧れを越えて、恋慕の情を抱いていたのである。
この状況はその秘めた思いを伝えるのにちょうど良いのではないか、そう考えても仕方がないほどのシチュエーションだった。
そんなことを考えて憲吾がモヤモヤしていると、綺音が口を開く。
「どうしたの? せっかくの料理が冷めてしまうわよ。それとも、何か言いたいことがあるのかしら?」
「えっ、いや、そういうことは……」
心を見透かしたような綺音の言葉に、憲吾はどうしても決定的な一言が発せずにいた。
「そう? 憲吾君、私に言いたいことがあるはずよ。今夜はそれを聞くためにセッティングしたんだから」
「えっ?」
思わず綾音の顔を見つめてしまう憲吾。
しかし、その真意はまったくうかがい知れなかった。
それでも、完全に自分の気持ちがばれていること。
そして、今夜それを打ち明けなければいけないように追い込まれたことだけは分かった。
人の悪い笑みを浮かべたまま綺音が言葉をつなぐ。
「私から指摘してあげても良いけど、それは嫌でしょう?」
「それは……」
憲吾は一瞬口ごもってから、改めてまっすぐ綺音を見る。
そんな真摯な視線を受けても、綺音はどこか飄々としている。
「綺音さん。自分とお付き合いをして欲しいです」
「思っていたよりもまっすぐ来たわね。そうね、……じゃあ、私のテスト受けてみる?」
「テスト?」
「そう、私の恋人の一人になるテスト」
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