夏の終わりを無作為に過ごす (Page 4)

「―――ここは…。」

 島に着いたとたん、ずんずんと海岸線の岩場を突き進んでいく彼女に案内され、人気が無い岩場の洞窟に到着した。
 
「港から見たら島の丁度裏側。満潮になると完全に水没するから地元の人もほとんど知らない場所だよ。」

 海面に反射した光が、洞窟の中を少しだけ明るくしてくれる。

「まだ、残っていたのか。」

「この場所知ってるの?おじさん…この島の人だった?」

 私がこの洞窟を利用していたのは、10代の時だ。

 危険な場所ほど、子供は行きたくなるし、そんな秘密の場所を見つけられるのもまた子供の特権だったのだろう。

 暗闇の中を歩けば冒険心が芽生え、目の前の海中に潜れば狩り人の気分になれる。
 
 そんな時間を過ごすことが1日の大半だったはずなのに…。
 
 時が経てばそんな好奇心も恐怖心へと変わり、危険な遊び場と言われたこの場所には近づかなくなっていった。

「変わってしまったのだな。」

「そか…おじさんがここに来てた時とは変わったかもね。知られてないって言っても利用してる人はいたはずだもん。」
 
 カレンは、洞窟の奥の方の少し開けた空間にある平らな岩場に腰を掛ける。

「時間になれば、ここまで海の水がくるからさ。座ってれば自然に死ねると思うんだよね。」
 
 確かにここまで水が来れば入口の方は、海中に浸かり地上に逃げることは不可能だろう。

 私も、彼女の隣に腰掛けこの洞窟で最後を迎えようと思った。

 洞窟の中で聞こえてくるのは打ち返す波の音だけ。

 この場所が海の水で満たされるにはどの位の時間が掛かるのだろう。

 聞く気は無かったが、横に座る彼女の顔を見るとどうしても気になってしまう。

 「カレンは、最後に何かしたい事はあるか?」

 親心の様なモノなのかもしれない。
 
 人は親になってしまった時、子供の前ではいい人間でありたいと無意識に思ってしまうものなのだ。

 彼女の死にたいという気持ちを私は否定しない。

 やることが何もなくなり、死を望んだ私に、やりたい事ができない彼女を諭すようなことはできないだろう。
 
 ならばせめて、彼女のやりたい事を聞く位のことはしてあげたい。
 
 私のあんな書き込みを信じて会ってくれたのだから。
 
 「急だね…おじさん。ちょっと待って、考えるから。」

 数時間前には、初めての挨拶を交わしていた彼女が、胸の谷間をアピールしながら私に寄り添ってくる。

「んー、じゃあキス…しよっか?」

 唐突な言葉に思わず聞き返してしまう。
 
「えっ?」

 私の返事も聞かずに彼女の唇が私の唇に重なる。
 
 少し湿った柔らかい唇の温もりが今の私には衝撃的過ぎた。
 
 グイグイと押し付けられる彼女のキスの強さに、私は緊張で動けなくなってしまう。
 
 後ろに押し倒されないように、耐えるしかない。
 
 ヌルっと唇を割って、舌が挿入ってくる。
 
 ぎこちなくただ口の中で動いている舌は、彼女の経験の浅さを表現しているのだろうか…。

「あ…はぁ…はぁ…。」

 小さく漏れる吐息に物足りなさを感じ、私からも舌を絡ませる。
 
 彼女が死ぬ前にやりたい事なのならば、私は受け入れる事しかできない。
 
 急な反撃に彼女が反応する、舌と舌を絡ませ唾液が交り合う。
 
 ピチャピチャと鳴る音は先程とは比べものにならない。
 
「ん…ふぁ…あ!息が…出来ない………。」

 口内の侵入者から逃れる様に、身体を引いて体勢を整えようとする彼女の背中を抱きしめる。
 
「んんんんんっっ!」

 抑えつけられた彼女の口の中をいいように貪る。
 
 舌先に吸い付き、フェラをするようにジュポジュポンと音を立てる。
 
 もっと激しく…動く彼女の頭を固定しようと手を伸ばすと、耳に手が触れる。
 
「ふぁぁああっっんんん!!」

 今までより激しい反応だ。耳が感じる所なのか。
 
 私はクリクリと指を耳に這わせる。
 
「あっ!はぁん!あっ!あっ!あっ!耳っ…は…んんっ!だっめ!」

 少し意地悪が過ぎたか、彼女に本気の拒絶をされてしまった。
 
「はぁ…はぁ…本当に、耳はダメだって。我慢できなくなるから。こう見えても、男の人とこういうことするの…初めてなの!」

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