盗まれた青い薔薇の行方 (Page 3)
「悪いが、そういうことなんでな」
「えぇ……」
指定された待ち合わせ場所から戻った澤木は、ばつが悪い思いをしていた。
なにしろ、確保した女を引き渡せば終わるはずだった仕事が延長になってしまったのだ。しかも澤木と鈴鹿で警護までする羽目になったのである。
しばらく、と先方は言っていたが具体的な期限までは知らされていない。あまりにもきな臭い事態の推移に、普段であれば前金だけで手を切るところだが、借りのある古賀(こが)に頭を下げられてしまっては断り切れなかった。
「俺も甘くなったもんだ」
頭を掻きながら、古賀は車の運転席に潜り込んだ。
「鈴鹿、そのお嬢ちゃんが目を覚ましたら適当なもんを着せといてくれ」
後部座席へ移動させた鈴鹿にそう言って、澤木はエンジンに火を入れる。
明け方の街を走り、オンボロ事務所に辿り着く。
事務所の裏手に車を停め、念のために周囲を窺ってから降りる。早朝の街は死んだように静かで、澤木は奇妙な居心地の悪さを感じた。
意識を失ったままの女を澤木が担ぎ、鈴鹿が先導する形でドアを開け、事務所の中に身を滑り込ませる。タイミングよく鈴鹿がドアを閉めたところで澤木は息を吐いた。
「やれやれ、面倒なことになったもんだ」
「じゃあ、断ればよかったのに」
「そうもいかないんだよ、大人の世界は」
ぐしゃぐしゃと鈴鹿の頭を撫で、澤木は女を担いだまま事務所を横断する。向かう先はシャワールームだ。
「鈴鹿、このお嬢ちゃんの身体を綺麗にしてやれ」
「私がするの?」
「悲鳴でも上げられたら敵わんからな」
「一緒に入らないの?」
「くそ狭いシャワールームに三人は入れないだろ」
「入れるよ」
言うが早いか、鈴鹿は澤木の服を脱がしにかかる。仕方なく澤木は担いでいた女をシャワールームの中に寝かせた。鈴鹿も続いて入ってくるが、やはり狭い。
澤木は観念して服を脱ぐ。傍では嬉しそうに鈴鹿も服を脱いでいる。
最後に澤木は女の顔を覆っているアイマスクと口枷を外す。露わになった女の顔は美人の部類だ。化粧はすっかり落ちて、あどけなさの残る素顔が二人の視線に曝されている。
羽織らせていた上着を脱がし、二人は苦労しながら女の身体を洗う。その間も女は一向に目を覚まさない。バスタオルで乱暴に身体を拭いても同様である。
それから澤木は普段は二人で使っているベッドに女を寝かせた。丸裸だが、毛布を掛けておいたので風邪は引かないだろう。
レビューを書く