盗まれた青い薔薇の行方 (Page 4)
身繕いを整えた澤木は疲労に重たくなった身体をソファに沈めた。安物のスプリングがぎいぎいと耳障りに鳴る。そこへ鈴鹿がさらに身を預けてくるのだから堪らない。
「おい」
「だって、ベッド取られちゃったし」
鈴鹿は澤木の服の下に手を差し込み、そろそろとくすぐるように触れる。
「そんなに可愛がられたいのか?」
にんまりと笑うだけで鈴鹿はそれ以上は何も言わない。どうやら澤木の口から言わせたいらしい。だが、澤木は徹夜明けのしょぼくれた目を擦り、鈴鹿を押しのけてソファから立った。
「もう若くないんだよ、俺は」
ソファから離れた澤木はデスクの椅子に座ることにする。溜息を吐き、ラジオの電源を入れた。聞き覚えのあるクラシックが流れ出す。どこの局なのかは知らないが、朝から優雅なことだ。澤木はこれまた安物の椅子の背を軋ませ、盛大に欠伸をした。
微かに雑音の混じったクラシックを聴きながら、次第に澤木は意識が眠りに溶けていくのを感じる。目を閉じるとゆるやかに眠りの淵へ落ちていく。
しかし、急速に澤木の意識が覚醒する。
原因は寝室の物音だ。
静かに彼が立ち上がると、鈴鹿も同じようにする。事務所を横切り、寝室の扉を一気に開いた。中には調度品らしいものはベッドと戸棚しかない。
そのベッドの真ん中で全裸の女が自らを慰めていた。
「おいおい。お嬢ちゃん」
「違うの。あの、曲を聞いたら、身体が勝手に熱くなってぇ……」
喋りながらも女の手は絶えもなく自らの秘所をまさぐっている。陰核を指の腹で弄び、もう一方の手は膣へと埋め込まれ、内部を刺激していた。
「ねえ、先生。どうなってるの?」
「……条件付けか。面倒臭ぇことをしやがる」
おそらく監禁されていた間に薬物を使って、一定の条件を満たすと欲情するように刷り込まれたのだ。アスリートなどが集中力を高めるために試合前などにルーティンをこなすのと理屈は同じだが、薬物を併用して深層心理に刻まれているため、性質が悪い。一種の洗脳だ。
「鈴鹿、ラジオを止めてきてくれ」
小さく頷き彼女はすぐに動いた。対して間を開けず、ラジオから流れていた音楽が停止する。しかし、女の手は止まらない。
「どうしたもんか」
頭を掻き、澤木が思案していると不意に女が歩み寄ってきた。そして、彼の足に縋りつく。白い蛇のように手が伸び、澤木の男根をズボンの上から嬲る。
「おいおい」
「お願いします。ください」
ズボンのチャックがいよいよ下ろされ、流石の澤木も女の手を掴んだ。
「あぁ」
触れられた手にすら性感を得たのか、女が悩まし気に声を零す。そして、もう一方の手を伸ばしてくる。澤木がその手も摑まえると赤い舌で唇を舐め、女は澤木の股間に顔を近づけた。
「おい、おいおい」
へっぴり腰になって澤木が逃げていると鈴鹿が戻ってきた。
「あっー!」
「このお嬢さんをどうにか――おい、お前まで何やってんだ」
鈴鹿は女の顔を押しのけ、自分が澤木のズボンの中へてを突っ込む。それだけでなく男根を引っ張り出し、裏筋から先端まで指先でなぞる始末だ。
「ずるいよぉ、わたしにはご褒美がないのに。あっ、だめ」
鈴鹿の制止も効果はなく、女は澤木の男根の先端へと舌を伸ばす。ちらりと敏感な部分を舐め上げられ、思わず澤木は呻く。それを見た鈴鹿がむっとした顔をして、同じように口を近づけた。
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