王子の裏の顔 (Page 4)
雄太は、小柄で華奢な身体つきをしていた。
顔立ちは童顔で、大きくくっきりした目と小さな顎が主張しているのは男らしさではなくかわいらしさだ。
雄太が「王子」というあだ名で呼ばれているのはそのためで、その見た目は雄太にとって昔からひどくコンプレックスだった。
何故なら、その見た目で雄太が女性から嫌われることはほとんどない代わりに、性的欲求の対象として見られることもまたほぼないからである。
しかし実際に雄太は見た目の雰囲気とは大きく異なる強い性欲を持っていた。
ただ女性から「男」として扱われないのに無理やりその欲望を果たそうとするわけにもいかず、結果として経験がほとんどないまま社会人になっていたのだ。
だから真理と初めてセックスした夜、互いに何度も絶頂に達するその激しい行為の後で真理が「王子、そんなすごいモノ持ってたんなら言ってよね」と言った時、雄太は深い満足を覚えた。
経験こそほとんどなかったし真理のリードのおかげではあるものの、自分はこんなに女性を満足させる力を持っていたのだとわかったことは自信になった。
それで正式に交際してもいない真理からの度々の誘いを断らず関係を続けてきたのだが、だからと言って関わる女性の数を増やしたいと思っていた訳ではない。
まして栞のような高嶺の花といきなりうまくやれるという気はしない。
「こちらが噂の王子です」
真理がおどけたように栞に紹介した。
「で、こちらが秘書課の内藤栞」
「あ…はじめまして」
「はじめまして」
互いに緊張して表情はこわばっているが、栞の方は困ったように微笑んだ。
「石井くん、だよね?今回は変なことお願いしちゃってごめんなさい」
「いえ、あの…ちょっとびっくり、は、しましたけど」
「あ、王子のOKまだもらってなかった」
真理はそう言って、いたずらっぽく笑いながら雄太の目を見た。
「そうだったの?」
栞の表情が曇る。
「あ、いや」
雄太が答えようとしたその時、真理が雄太のバスローブの裾をめくって覗き込んだ。
「なんだ、全然大丈夫じゃん」
栞を目にしてすっかり興奮している雄太のペニスを確認し、真理は面白そうに笑いながら言った。
「ちょっと!」
慌てて雄太は真理の手を押さえた。
栞は頬を染めて恥ずかしそうに俯いている。
「ははは、というわけで大丈夫そうだから、栞も安心してこの子に任せてみなよ」
「真理」
「私がばっちり仕込んでるから、変なことはしないしね」
言いながら真理は、念を押すように雄太を見た。
「、はい…あの、僕でお役に立てるなら」
雄太はいよいよ腹を決めた。
栞に、つまり真理以外の女性にとっても自分は性的に力を発揮することができるのか不安はあるが、長年性欲を燻らせてきた自分にとっては喜びでもあるこの機会をいっそ楽しんでしまおうと思ったのだ。
「ありがとう」
恥ずかしそうに、しかしこちらをしっかり見て栞は言った。
「じゃ、私はシャワー浴びたら帰るから、始めちゃって!」
そう言うと真理は、軽やかな足取りで浴室に消えていった。
読みやすい!男性が不慣れでも優しくリードしてくれる姿がとても好きです
リリー さん 2022年12月9日