シャワールームの男と女 / オンナ絡みの揉め事解決屋④ (Page 3)

下準備

翌日からは、山川に教えられた妻・珠江の基本行動書にもとづいて、山川が出勤してから夕食の準備が始まるまでの間に“抜け道”がないかを探るために、尾行をしてみた。

珠江は山川の事前報告通りに、外出しても夕刻には帰ってきていた。これは張りついた雑賀が証明できる。ということは、やはり浮気をするとしたら昼間という事になる。
しかし、ここでも見落としがあるとは到底思えなかったのである。

それでも、あるとしたら女性しか行けない場所か男性がいたらやたら目立つ場所しかない。
クライアントが、長年、寝食を共にして「浮気をしている」と感じているのなら、やはりシていると考えるのが至極当然なのだ。

そこで、雑賀は助っ人として里美を呼んだのだった。彼女は、雑賀がAV監督をしていた頃からの知り合いで、元々はセクシー女優からメークに転身した変わり種だ。
雑賀組の撮影の時などは、助監督をしてもらった事もある。「機転が利いて気も利く」ので、重宝していた記憶がある。

ひと足先に雑賀がAV業界から足抜けしたあとすぐに「実はワタシも辞めたいんですよねぇ」と去就を相談しにきたくらいの仲だった。

この時、榊は興信所に勤めていて日本流の探偵ビジネスを覚えていた頃。その話しを聴いた里見も、「ワタシにもできますかねぇ?」とすがるような目で訴えてきたので、雑賀は系列の大宮営業所を紹介したのだった。

雑賀が護身用(ウソだが)として日本拳法と実戦空手の稽古をしていると言うと、流派は違うが自分でも空手を習いにいったガッツのある女だったのである。

35歳になり、現在は元エロ本カメラマンのご主人と5歳の息子と幸せにくらしている。ただ、夫の給料だけでは不安なので雑賀の仕事も手伝っているのだった。

今回は、美容院や婦人科、トイレ、ブティックなどの場所に珠江が入り込んだ時に、ごく至近距離まで引っ付いてもらうつもりで雇ったのだった。その辺のテクは元探偵なので、心配はない。

単独で2日、里美を加えて5日、計1週間ほど張り込んでみた結果、「どうにも怪しいのは、スポーツジムくらいしかない」、という結論を出した。

そのジムは都内の一等地に本部兼ジムを持つ高級スポーツクラブなので、メンバーフィーがやたらと高いので躊躇していたのだ。
だが、消去法でいくと、もうそこにしか可能性はない。

仕方がないので、雑賀はクライアントに指示を仰いだ。Noならば、2人とも自腹で会員にならなければならない。

だが、そんな心配は杞憂で、山川は「2回目の離婚の時なんかは、不倫旅行を追いかけてハワイまで行ってもらいましたよ。それよりも、成果を出してくださいよ」との事だった。

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