シャワールームの男と女 / オンナ絡みの揉め事解決屋④ (Page 4)
珠江のルーティン-朝のジムにて-
夫・山川と先妻の子供たち2人を送り出した毎朝のように珠江がやって来ていたのは、スポーツジムだった。この時点では、単独だ。
1000mの距離を軽く泳ぎきった珠江は、プールサイドのベンチで一息をつきはじめていたのだった。時刻は、まだ朝の9時である。
24時間オープンがウリのジムで、都心では芸能人やIT実業家、水商売成功者で、まぁまぁの人の出入りがあるものの、ここ埼玉では勝手が違った。
セレブたちの出番には、まだまだ早いし、エリートビジネスマンは都内へ出勤してしまっている。
要するに、中途半端に「都会的」なベッドタウンであるがために、本物の都心とは客層・時間帯にズレがしょうじていたという事だ。
つまり“空洞化した時間”なのである。そんな現状なので、マシンやダンス系、スイム、全フロアに人がまばらだった。そこに新規メンバーになった雑賀と里美の姿があった。
2人ともスイムスーツに着替えて、珠江のベンチと同一線上にあるプールサイドでくつろいでは、逆に怪しまれないように時折は泳いでいたのだった。
もちろん、対象を見失わないように泳ぐのはひとりずつだった。
ほかにプールにいたのは、珠江と単独で来ているOL風の女だけだ。
プールには、この2人の女性と雑賀たちの即席ペアしかいない。それで油断したのか、珠江と女の2人は同じレーンで泳いでふざけ合ったりして、はしゃいでいたようだった。
その行動から、2人は「連れ合い」だと分かる。
この女は、ときおり、珠江のミニ・クーパーSに同乗して一緒にジムを出て、決まってオシャレなカフェでおしゃべりをしていた。いわばママ友のように見えたりもしていたのだ。
珠江は33歳だから、少し年下の26歳くらいかと思われた。いつも平日にお茶をしているくらいだからOL風という雑賀の見立てはハズレで、珠江と同じプチ・セレブの匂いがしていた、それも、街中ではプンプンと匂ってくるような2人だった。
ちなみに珠江は、プール上がりにヘアスタイルとメークをばっちりと決めていて、家を出る時よりも、数段は輝いて見えた。クロールと背泳を得意にしているくらいなので、筋肉に衰えは見られずに引退したばかりのアスリートのような体型で、スタイルも良かった。
一方のお相手の女(米国時代の同級生で、いつもはドライバー役で手伝ってもらっている中村にジムのコンピュータに潜入して調べてもらうと岩田節子という名だと判明)は、小柄だが要所の部位の発達が良く、アイドル顔をしていた。
取り敢えずは、このふたりのツー・ショット写真も何かの役にたつだろうと抑えておいたのだが、プリントしてみると雑賀の胸の内にあったモヤモヤがさらに大きくなりだしたのである。
そして、何気なく撮った写真にそのモヤモヤの答えがあったのだった。
節子を見つめる珠江の目力が異様なのである。
「これは、レズだな」と、直感したのである。よく見ると、手と足が触れるか触れないかの微妙な線で2人は繋がっていたのだ。
2人とも夫がいて、それなりにセックスはしてるだろうから、二刀流なのか? 真性のビアンなのか? はたまた偽装結婚なのか?
そこまでは調査メニューにはないので、一応は備考欄には「LGBTの可能性あり」とだけ、記す事にした。
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