シャワールームの男と女 / オンナ絡みの揉め事解決屋④ (Page 2)
閑話休題。
榊が連れてきた依頼人は山川といい、53歳にして3度目の離婚を目論む何とも羨ましい男性だった。雑賀よりも10歳も年上だが、10年後にもそのような“元気”を維持する自信は到底ない。
職業は「自営業者」と称していたが、山川からは榊とは同種の匂いがした。つまり、「胡散臭さとしたたかさ」が同居する匂いだ。
依頼自体は、奥方の浮気調査という、ありきたりのモノだった。
この3番目の妻・珠江は山川よりも20歳も年下で、取引先の事務員だったのを相手の上司に無理矢理頼み込んで見合いから結婚に持ち込んだらしい。
もともとオトコ遊びをするようなタイプではないと放置していたら、「どうも怪しい」と、男女間については百戦錬磨の山川が感じ取ったらしい。
調査に関しては、行動確認書とともに必ず写真(動画でも可)、録音テープといった証拠を押さえてほしいというのが、山川の条件だったのである。
「ところで、山川さん。私のところで何社目の依頼ですか?」
雑賀は、こんな事で駆け引きをするのは時間の無駄なので、ズバリと聞いたのだった。
「料金も他社よりは高いし、普通はウチには来ないんですよね。単なる浮気調査は」
「ウワサとおりに鋭い人ですね。実は3社目です。どうしても尻尾を掴ませないのですが、ヤっているはずなんですよ」
「“遊び人の勘”ってヤツですね。そういうの、私は信じる方なんですよ。分かりました、お受けしましょう」
山川は離婚訴訟を有利に進めたいがために、どうしても証拠が欲しいのだろう。で、ここ埼玉では少しは名の知れた榊に泣きついたと思われた。
それに、どうしてウラを取らせないのかも気になったのである。雑賀は、「厄介な事にならなければいいが」と思いながら、基本料金は他社並みに抑えて「特殊料金」を高く見積もってみたのだった。
具体例の詳細は書かなかったが、面倒が起こるたびに付加価値を付けてもらうようにしたのである。榊は弁護士なので、山川が踏み倒す事はないだろうと睨んでの料金設定をしてみたのだ。
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