宅飲み不倫

・作

岩永敬介は、高校時代の同級生である成田稔と妻の香織がクラス新居にお祝いのために訪れていた。稔と敬介は長い付き合いの親友だが、敬介が稔には知らせていないことがあった。それは、稔の妻の香織と自分は大学時代セフレ関係にあったということだ。酒に弱い稔が潰れて眠ってしまった横で、台所を片付ける香織に寄っていく敬介は、当時のように香織をセックスに誘う。いけないこととわかりながら、敬介によって開発された香織の身体は反応してしまうのだった。

「しかし香織と稔が結婚するとはなぁ」

3杯目のビールをぐいっと飲み干した岩永敬介は、目の前に座っている成田稔の顔をまじまじと見ながら言った。

「何回言うんだよ、それ…でも俺も実際不思議だよ。香織が俺と結婚してくれるなんて」

酒に弱い稔はすっかり赤くなった顔で苦笑いしながら答える。
稔の妻の香織は、台所で次のつまみを準備している様子だが、会話は薄く聞こえているようだった。

 

 

敬介と稔は中学時代からの親友だ。高校卒業まで共にサッカー部で汗を流した。
大学時代こそ別々の地域で過ごしたが、2人とも地元に戻って就職することにしたため再び親交が深まった。

稔が高校時代の同級生である香織と結婚したのは就職して4年が経った今年のはじめのことだった。
仕事を通じて再会した2人が付き合っているという話を2年前から敬介は聞いていた。

敬介は、今夜改めてお祝いにと新婚夫婦の家に訪れていた。しばらく仕事が忙しく、時間が取れなかったため稔とも久しぶりの再会だ。
入籍から数ヶ月が経っているためか新居もすっかり片付いており、ひとしきり祝いの品をもらった後なのだろう揃いの生活用品が目についた。

 

 

「北高のマドンナ、橋本かおりんも今や人妻ってわけだ」

けらけらと笑いながら敬介が言うと、台所から戻ってきた香織が眉をひそめた。

「やめてよその、かおりんって」

香織はつまみの乗った皿をテーブルに置くと、稔の隣の椅子に座った。
ダイニングテーブルには所狭しと香織の手料理が並べられている。

「ははは、懐かしいなあ、男子は皆そう呼んでたんだよ」

稔が赤い顔でへらっと笑う。
当時人気のあったグラビアタレントの愛称を使って男子は香織をアイドル視していた。それほど香織は、美しく瑞々しい魅力があったのだ。

「稔、飲み過ぎだよ?ほらお水」

香織は嗜めるように言い、稔の方に水を差し出した。

「いいんだよ、今日は。せっかく敬介が来てくれたんだからさ」

「もう…」

嬉しそうににこにこ笑う稔は、実際いつになく酒を飲んでいて、今にもぐにゃりと崩れ落ちそうだ。

「弱いんだから加減しなって言ってるのに…」

「まあまあ、ここは稔ん家なんだからさ、つぶれちゃっても大丈夫って安心感があるんじゃないの?」

ため息まじりの香織に、敬介がフォローを入れた。

「そうそう、そういう、こと!」

呂律が怪しくなってきた稔が大仰に頷いて、また陽気に笑う。親友の久しぶりの訪問が本当に嬉しいらしかった。

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