夜のドライブ
須藤裕之と上田知佳は、新卒で金融機関に入社した同期だ。とある県庁所在地の支店に一緒に配属されたことで2人は急速に仲良くなっていった。仲のいい友人関係だったが、裕之が交際していた恋人と破局したことをきっかけに2人はセックスするようになる。今夜もお互いにそのつもりで、まだ新しい裕之の車でドライブをしていた…
「あぁーなんか、やっぱこういう時は、ねえ」
車内に沈黙が流れ始めて2分ほどが経ったところで、運転席の須藤裕之は空々しく言い放った。
「んー?」
お互いに何を求めているかはわかりきっているが、助手席の上田知佳も空々しく尋ね返す。
「いやー、ほら、さ」
裕之は運転を続けながら、知佳の手を握った。
「ふふふ」
知佳は笑うが、期待のために早くも笑い声がしっとり濡れていることに自分で気がついた。
「寒いしね?」
言いながら裕之が知佳の手をすりすりと撫でると、知佳も応じて指を絡ませた。
「寒いねえ」
車の外の空気はひんやりと乾燥しているはずなのに、車内ではじんわり湿度が上がっていくようだ。
「あっためあいたいなぁ…的なね」
「んんー…」
ねっとりと指を絡ませあいながら、空っぽの会話を2人は続ける。
人気のない海沿いの夜道を、裕之は片手で器用に運転する。
「知佳ちゃんをあっためたいしね?」
「えー…うーん」
知佳の返事が上の空なのは、指を絡めているだけなのに、裕之の滑らかで長い指に撫で回される快感に既にうっとりし始めてしまっているからだ。
「知佳ちゃんも、俺をあっためたいんじゃないかなーと」
「ははは…」
裕之は車を少し広めの公園の駐車場に停めた。
夜なので、他に停まっている車はない。
絡ませる指の勢いは増す。
車を停めたことで、先ほどまでより濃い沈黙が2人の間に流れる。
「知佳ちゃん」
2人は顔を見合わせた。
暗いが、遠くの街灯の灯りがうっすら互いの顔を判別させている。
今すぐにでもしゃぶりつきたくなるような欲情ぶりを、互いに相手の濡れた目から感じていた。
同じ熱量で互いに欲しがり合っているというのは、幸福なことだと知佳はつくづく思う。
「ん」
指を絡めたままの状態で、裕之は知佳の顔の方に手を持っていった。
すると、とろんとした目で知佳はひろゆきの手首あたりを両手で握る。
裕之が知佳の唇のそばを指ですりすりと撫でると、知佳の方から口をその指に寄せた。
指をゆっくり知佳の唇に這わせると、知佳はぱくりと裕之の指を咥えた。
こうして男の指をしゃぶるのが、知佳は好きだった。指はペニスなどより細くてしゃぶりやすいし、自在に動いて口内を撫で回してくる。
何より自分がすごく気持ちいいし、指を動かしながらも気持ちよくてとろんとしていく男の顔を近くで見ながらできるのも好きなポイントだ。
「ん…ふぅ」
くちゅくちゅと水音を立て、知佳は行為に没頭していく。
裕之の表情は、情欲にまみれてギラついていて、それもまた知佳の欲望をどんどん高めるのだった。
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