幽霊の弱点はエロいこと!? (Page 2)

 それが、不意に止んだ。
 足音が消え、光の乱舞も止む。
 じっとりと汗ばんだ手で、隼人は懐中電灯を握り直した。落としてしまったら、真っ暗闇の中に放り出されてしまう。
 
 気づけば四人で固まっていた。
 隼人以外の三人は男性が一人と、女性が二人。
 
 どういう訳か、女性二人は隼人を盾にするように背中に隠れている。もう一人の男性はへっぴり腰になっているのが視界の端に見えた。
 
「な、に? あれ」
 女性の一人が震え声で問う。
 
 他の三人の視線が自然と彼女が照らしている先へと向かった。
 隼人が正対していた廊下の奥ではなく、開け放たれた個室らしき空間。そこへ女性の持つ懐中電灯は向かっている。ガラスのなくなった窓枠ぐらいしか、隼人の位置から見えない。
 
「わあああ」
 男性が悲鳴を上げて、駆け出した。
 
 彼のパニックは瞬く間に伝染し、女性の一人は盾にしていた隼人を突き飛ばすようにして階下へと駆け出す。思わずつんのめった彼を残し、もう一人の女性も無慈悲に走り出した。取り残された隼人はなんとか踏ん張って転倒だけは免れる。
 
 だが、仲間達はとっくに階下へと逃げ出し、一人取り残されてしまっている状態だ。
 怪談のお約束では、発狂した状態で発見されるか、行方不明になってしまう哀れな登場人物という役回りである。
 
「マジかよ、くそっ」
 自分でも不思議だったが、そんな言葉がすらすらと口から飛び出した。
 
 背後を見ることもなく、隼人は廃墟を脱出し、車を止めた場所まで一目散に向かう。
 車二台で来たことが良かったのか悪かったのか、仲間達は彼を待つこともなく、先に逃げ出したようだった。
 
 キーを差し、隼人は恐れに重たくなった空気と共に山を下りる。結局街に下りても仲間の車には追い付けない。人通りの絶えた道を時折すれ違う車の姿にほっとしながら、彼は夜の街を一人きりで走った。
 そして、車を貸してくれた友人宅近くの駐車場に辿り着く。
 
 砂利を敷いた月極めの駐車場には、他にも車が停まっていた。
 しかし、隼人はなかなか車から降りる決心がつかない。終電もすでにないのだ。自分のアパートまで歩いて帰るのが、怖い。
 
 かといって、このまま車の中にいるのも怖い。そうやって悶々と悩んでいた隼人は天啓じみた閃きを得る。
 急いでポケットからスマホを取り出し、隼人は車を貸してくれた友人を呼び出す。日付はすでに変わっている時刻だ。無視されてしまう可能性もある。だが、隼人は相手が出るまで電話をかけ続けるつもりである。
 

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