幽霊の弱点はエロいこと!? (Page 5)

 不規則なリズムで滅茶苦茶に外から叩かれていた。その振動でカーテンが微かに揺れる。
 綾瀬が怯えた顔で隼人にしがみ付く。隼人も縋るように綾瀬を抱き締めた。
 
「あっ」
 柔らかい。そう思って思わず隼人の口から声が漏れた。恐怖よりもスケベ心が一瞬とはいえ勝ってしまったのである。
 
 恐怖で色々と麻痺しているせいなのか、隼人には自分でも訳が分からなかった。
 だが、薄いTシャツ越しの胸はブラを着けていないせいか非常に柔らかく、ふにゃりと形を歪めて彼へ押し付けられているのだ。しかも鼻先には綾瀬の頭があり、そこからは少し甘いような匂いが薫っている。

「嘘だろ」
 隼人の股間は、それはもう元気になっていた。先ほどまで幽霊に怯えて縮こまっていたくせに、今は元気にズボンを押し上げている。きっと、追い詰められて生存本能と生殖本能が、などと隼人は頭の中で色々と言い訳した。
 
 窓を叩く音は止まない。それどころか、隼人が何度も耳にした裸足の足音が部屋の中から聞こえる。それも間近で聞こえるのだ。
 
「ひっ」
 さらに綾瀬が密着してくる。
 腰を引いて綾瀬に勃起を悟られないようにしていたが、思いっきり彼女の下腹の辺りに先端が当たった。

「は?」
「えぇっと」

 恐怖が一瞬で怒りに変わったらしい綾瀬に間近で睨まれ、別の意味で隼人は命の危険を感じる。
 そんな隼人にまたしても天啓が舞い降りた。
 
「あれ、なんていうのか、幽霊ってエロいのダメなんだって、マジで」
 ネットで聞き齧った話を隼人は必死で披露する。
 
 そしてエロの神様がいるとしたら、きっと今は自分に味方をしている。隼人は奇妙な自信を持って、活路を見出してしまう。この恐ろしい出来事から助かるには、これしかないと確信してしまった。
 
 ばんばんばんばん。ぺたぺたぺたぺたぺた。
 窓を叩く音と足音がより激しくなる。まるで隼人の提案に異を唱えるかのように。
 いや、もう一人、異を唱える者がいる。
 
「嘘吐けっ!」
「でも、このまま朝まで待つのかよ」
「隼人が連れてきたんだろっ」
「もう綾瀬も巻き込まれてるって!」
「巻き込んだんだよ、お・ま・え・がぁ!」

 綾瀬は隼人の首根っこを掴んでがくがく揺さぶる。その振動にふわりと隼人の意識が飛ぶ。足から力が抜け、ふらふらと密着している綾瀬に寄りかかってしまう。
 
「ちょおぉぉぃ!」
 変な叫びをあげながら、ぐったりしてしまった隼人を抱きかかえ、綾瀬はふらふらと後退する。
「ひぇぇ」

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