幽霊の弱点はエロいこと!? (Page 3)

 一度留守番電話になり、さらにもう一度かけなおすと今度は繋がった。
 
「……なに?」
 とてつもなく不機嫌な声が聞こえてくる。
 
「頼む。一晩泊めてくれ」
「はぁ?」
「訳はちゃんと話すから、頼む……!」
「理由を今すぐ言って。納得出来たら、考えるから」
「考えるだけかよ。頼むって」
「ちっ」

 はっきりと舌打ちをされた。
 友人の寝起きがこんなに悪いとは思わなかった隼人は、哀れっぽい声を出して助けを求める。
 
「頼むって、マジで」
「……分かった。じゃあ、玄関前まで来たら連絡して、開けるから」
「助かる! マジで! すぐ行く!」
「……ゆっくりでいいよ」

 深いため息と共に電話が切れる。
 隼人は何度か深呼吸をして、それでもなかなか決心がつかずに車の中から外の様子を窺った。
 なにもない。なにもないと自分に言い聞かせ、隼人はついに車から降りる。外の空気は心なしかひんやりしている気がした。昼間は意識すらできない空気が鳴る音が、遠くからごぉっと響いている。
 
 そろりそろりと足音を忍ばせ、彼は夜道を歩き出す。街灯の明かりの届かない僅かな暗がりが異様な恐怖の対象となっていることに、途中で気が付いた。
 
 一度自覚してしまうと、もうだめだ。足が動かない。暗がりに足を踏み入れることができない。迂回してもいいが、別の暗がりがぽっかりと口を開けて待ち構えている気がする。
 
 ぺた。
 ……ぺた。
 …………ぺた。
 
 しんとした夜道に。人の営みの中に、裸足の足音がした。
 恐ろしいものは暗がりではなく、背後から隼人を追ってきている。
 
 ひゅう、と喉の奥が笛のように鳴った。
 全力で隼人は走り出す。
 
 耳元で風が背後に流れていく音がする。そして、それに紛れて裸足の足音も。
 無我夢中で走り、小さなアパートに隼人は辿り着いた。二階までの外階段を一段飛ばしで駆けあがり、一番奥にある角部屋の扉を友人の名前を呼びながら乱打する。
 

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