出戻りねえちゃん
北山未智は、今まさに離婚しようとしている30歳の女性だ。セックスレスの挙句に若い女と不倫され、まさに踏んだり蹴ったりで実家に帰ってきた。そこで久しぶりに、かつての幼馴染である森翔太に会った未智は、子供の頃から友達の姉として自分を憧れの目で見ていた翔太なら、失った自分の女としての自信を取り戻させてくれるのではないかと考えた。そして…
「ねぇ、俺本気だよ?」
北山未智が幼馴染の森翔太に押し倒されたのは、カラオケボックスの小さな部屋の中だった。
「ちょっと…」
驚いたように未智は目を見開くが、実際ある程度こうなることは予測していた。
「未智ねえちゃんだってわかってたでしょ、俺の気持ち」
「私はそんなつもり…ねぇ翔太、ちょっと落ち着いて」
カラオケボックスに入ってから3時間、こうなるように煽っていた。
それでも実際に翔太に迫られてみるとどきどきと胸が高鳴るのは、こんなに熱烈に性的に求められるのが本当に久しぶりだからかもしれない。
「落ち着いてるよ」
「…ちょ、んぅっ…」
翔太ははやる気持ちを抑えきれず、上から覆い被さるように未智にキスをした。
まるで「本懐を遂げる」かのような熱い口づけに、未智はうっとりと蕩けそうになる。
これだ。これが欲しかったのだ。
未智は乾いていた心がじんわり満たされるのを感じながら、次の一手を考える。
「んっ、ふぅ…っ」
熱く勢いがある割に乱暴でなく、意外と優しくほぐすようなキスだった。
「…わかってるの?私まだ人妻なんだよ」
咎めるような口調で言うが、自分の瞳が潤んでいるのがわかる。
これでは却って翔太の気持ちを盛り上げるだけだがそれで良かった。
「別れるんでしょ」
「でもまだ別れてない」
「てか未智ねえちゃん、旦那がいなかったら俺とそうなっていいってこと?」
「…」
この沈黙はイエスだった。
そしてそれを察するには十分な関係が、2人の間にはある。
にやりと笑った翔太はもう一度未智にキスをした。
唇を割って侵入してきた翔太の舌に未智も自分の舌を絡めて、キスはどんどん深くなっていく。
「んん…ぅ、っ」
一緒に過ごしていたあの頃より大きくなった気がする、未智の柔らかい乳房にそっと触れると、未智はぴくっと肩を震わせた。
「ん、んっ…ふ」
全身が粟立つような、ぞくぞくした快感に未智は飲み込まれそうになる。
しかし、どうせなら思い切り楽しみたい。
未智は腕に少し力を込めて翔太の肩を押し返した。
「ね、こんなとこじゃ…やだよ」
ねだるような声を出して未智が翔太を見つめると、翔太は眉根を寄せて困ったような顔をした。
「場所変えようか」
期待と不安を込めた目で翔太が言う。
小さく未智が頷くと、翔太は上体を起こしていそいそと部屋を出る準備を始めた。
このカラオケボックスから歩いてほんの5分くらいの場所にラブホテルがあることを翔太は認識していたし、未智もそれはわかっていた。
2人ともが把握していたのは、2人ともがそうなることを期待していたからだ。
移動する間、2人はほとんど言葉を交わさなかった。
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